迎撃は不可能…ロシア軍が極音速ミサイル「キンジャール」を使った深い意味

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プーチンの脅迫

 従来の核ミサイルは、アメリカが中心となり、迎撃システムが構築されつつある。

「核ミサイルを発射すれば、偵察衛星がキャッチします。瞬時に海上のイージス艦や陸上のイージスアショアに連絡が入り、着弾点を予測します。従来のミサイルは放物線を描いて飛ぶので、迎撃するための時間的な余裕があります。こうして迎撃システムが構築されてきましたが、極超音速ミサイルに従来の迎撃システムは役に立ちません」(同・軍事ジャーナリスト)

 ウクライナで使われたキンジャールは、MiG-31kという大型戦闘機から発射された。こうなると、衛星が発射をキャッチするのは非常に難しい。

「放物線を描かず、目標に向かって自由自在に進みます。直進することもできれば、左右に迂回することも可能です。従来の迎撃システムでは全く歯が立ちません」(同・軍事ジャーナリスト)

 ロシアの核ミサイルを無力化するため、ポーランドにはイージスアショアが配備されているという。だが、キンジャールが相手となると役に立たない。

「ロシアはウクライナでキンジャールを発射したことで、既に欧米諸国へ脅しをかけたと見るべきでしょう。『この極超音速ミサイルに核弾頭を搭載すれば、ポーランドのイージスアショアは役に立たないぞ。その気になれば、欧米各国を核攻撃できるぞ』というメッセージを送ったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

核使用のデメリット

 脅迫としては、これだけで充分だという。むしろウクライナで核を使うと、かえって逆効果となりかねない。

「国際世論は一致団結して、ロシアを非難するでしょう。これまでロシアとのパイプを保ってきたインドや中国も、さすがにロシアを見限るかもしれません。何より考えられるのが、ロシア国内の動揺です。これまで『世界で唯一の核使用国』はアメリカでした。ところがロシアがウクライナで核を使用すれば、『2番目に核兵器を使った国』としてロシアの名前は永遠に残ります。この不名誉に、ロシア国民の怒りが爆発し、プーチン打倒に動いてもおかしくありません。さすがのプーチンでも、核兵器を使うことはないと見ます」(同・軍事ジャーナリスト)

出典註:ロシアがウクライナに発射した極超音速ミサイルについて知っておくべきこと(CNN・日本語・電子版:3月23日)

デイリー新潮編集部

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