迎撃は不可能…ロシア軍が極音速ミサイル「キンジャール」を使った深い意味

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「核で和平」のシナリオ

 広島に投下された「リトルボーイ」はTNT火薬で約16キロトン相当、長崎に投下された「ファットマン」は同じく約21キロトン相当とされている。記事にある《1キロトン》が非常に小型だということは、素人でも理解できるだろう。

 記事の後半では、《米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」の戦略・安全保障センター副所長のマシュー・クローニグ》がワシントンポストの取材に応じ、次のように語っている。

《「プーチンが核兵器を使わずに軍事的完敗を受け入れるとは思えません。彼は、敗北を認めるよりも核の限定的使用のほうがマシだと考えるでしょう」》

 クローニグ氏は、ウクライナの民間機や戦車が小型核攻撃のターゲットになり得ると指摘した上で、都市攻撃もあり得ると言う。

《「可能性は低いですが、小さな都市を核攻撃することもありえます。軍事施設よりも民間人を標的にしたほうが危機のエスカレートにつながります」》

 まさに非人道的な攻撃だが、クローニグ氏は、ロシアが核攻撃に踏み切ることによって、和平の道が切り開かれると語っている。

《「そして西側は『オー・マイ・ゴッド、あいつは核兵器を使いやがった』となるでしょう。それをプーチンは期待しているのです。私たちが『これはもう度を越した。和平を求めなくてはならない』と思うのを」》

極超音速ミサイルの恐怖

 記事に説得力を感じた方も多いかもしれない。だが、さる軍事ジャーナリストは「ロシアが核を使う可能性は低いと考えています」と見る。

「理由は2つあります。ロシアは既に『核兵器を使うぞ』という脅しを欧米に突きつけていることが1点目。更に、ロシアが核兵器を使った場合、それは結局、ロシア国内を動揺させるなど、プーチン大統領にとってはデメリットが大きいというのが2点目です」

 1点目について軍事ジャーナリストは、アメリカのジョー・バイデン大統領(79)が3月21日、《ロシアがウクライナ侵攻で極超音速ミサイルを使用したことを認めた》との記事に注目する(出典註)。

「極超音速ミサイルは、もともとバラク・オバマ氏(60)が大統領だった時、『核兵器より実戦的な兵器を開発し、核兵器を無意味なものにする』という目的から研究をスタートさせました。マッハ5以上という超高速で飛ぶミサイルなら、どんな目標でも短時間に撃滅できます」(同・軍事ジャーナリスト)

 ところが、アメリカより中国やロシアのほうが、極超音速ミサイルの開発スピードは速かったという。

「ロシアはマッハ10以上という『Kh-47M2 キンジャール』の開発に成功しました。今回、使用されたのも、このミサイルです。おまけにアメリカとは異なりロシアも中国も、最初から核弾頭を搭載するつもりでした」(同・軍事ジャーナリスト)

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