免疫機能に効く「最強のお鍋」の作り方 抗酸化物質が含まれる食材は?

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ビタミンCと葉酸

 堂園博士に、鍋料理も患者に勧めているのか、と尋ねた。すると「もちろんです」と言った。

「今日も60代の女性の患者さんが来ましたが、肌がすごく綺麗になっているんです。娘さんから、お母さんどうしたの、毛穴が小さくなって肌がすごいよ、と言われたそうです」

 こうした嬉しい反応がある以上に、堂園博士が注目しているのは、鍋料理や「野菜スープ」でビタミンCが摂れることだという。

「野菜を煮たらビタミンCが壊れるというのが常識だったのに、野菜は煮込んでもビタミンは壊れず(前田名誉教授によれば60%以上残るという)、冷凍庫に保存しても栄養素がなくならないというのは、常識を覆すような画期的発見です」

 と述べ、こう説明してくれた。

「免疫系を健全に保つのに必要なビタミンは、ビタミンA、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンCです。特に効果的なのはビタミンCで、人体にとってなくてはならない抗体の産生量も、実はビタミンCの摂取量に影響されることがわかっています。風邪(ウイルス感染)にかかると体内のビタミンCの量は半減し、その後数日は低い値が続くので細菌感染を受けやすくなります。また、もう一つの免疫物質にインターフェロンがありますが、この産生量もビタミンCの影響を受けることがわかっています。日頃からビタミンCを摂取していると、風邪などの罹患率が低下するうえ、ウイルス感染をしても、二次的な細菌感染を防止できると期待できるのです」

 野菜の多くは、抗酸化物質だけでなく、ビタミンAやビタミンC、葉酸などを豊富に含んでいる。ちなみに、老化を防ぐには細胞の修復が重要で、それに必要なのが葉酸だ。これは緑の濃い野菜に多く含まれている。鍋料理や野菜スープは、ウイルスに感染しにくい体を作るだけでなく、老化を遅らせ、がんなどの予防にもなるということだ。

腸内環境を改善

 最近、名古屋大学の研究グループが、「コリンセラ」という腸内細菌がCOVID-19の感染と重症化を予防する可能性があると発表して話題になっている。日本を含む10カ国953人の健康な人の腸内細菌叢のデータと、新型コロナウイルスによる死亡率との関係を調べたところ、「コリンセラ」という腸内細菌の比率が低いほど死亡率が高くなることがわかったという。この腸内細菌、日本や韓国、フィンランドなどでは多く、アメリカやイタリア、メキシコなどでは少なかったことから、欧米に比べてアジア人の死亡率を低くしているファクターXの一つが、この腸内細菌ではないかといわれているのだ。コリンセラ属の腸内細菌は新型コロナウイルスが細胞に結合するのを防ぎ、炎症を抑えるなどの働きをする物質を作り出していて、それが理由ではないかと考えられている。まだ仮説の段階だが、可能性は十分あるだろう。

 この論文からもわかるように、腸内細菌は私たちの健康に大きな役割を果たしている。潰瘍性大腸炎という慢性の病気で苦しんでいた患者が、健康な人の糞便を移植したらよくなったというのも、腸内細菌叢を正常に戻せたからだろう。人体はそれだけで生きているのではない。私たちは100兆個とも1千兆個(誰も数えたことがない)ともいわれる腸内細菌と共生することで健康を維持しているのだ。その腸内環境を改善するには鍋料理を含む「野菜スープ」が非常に効果的なのである。

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