「働かないおじさん」は当人を責めても意味がない? 背景に日本型雇用システムが…企業側の対処法は?

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会社員以外の「もう一人の自分」が重要

 もちろんいきなり会社を退職して起業や独立できる人はほとんどいません。そのため、会社に在籍しながら会社員とは違う「もう一人の自分」を持つことが大事だと知りました。

 そこで私は「楠木新」として、会社員の傍ら50歳から執筆を始めました。

「もう一人の自分」を持つというとすぐに副業が頭に浮かぶかもしれません。しかし、身の丈にあった起業の準備や転職、趣味を充実させる、または地域活動やボランティア、学び直しなど幅広くとらえることです。特に収入が多いとか周囲からよく見えるといったことではなく、本当に自分に合ったものに取り組むのがポイントです。

 この「もう一人の自分」が育ってくると、会社の仕事の質も上がるのです。社外に楽しい趣味を持っている人で会社の仕事をないがしろにしている人はほとんどいないと思います。私自身も執筆に取り組み始めてからは、週末が終わって仕事が始まる月曜日が来ると憂鬱になる「サザエさん症候群」とも無縁になり、会社の仕事の生産性や効率も高まったと思っています。

社外の人との付き合いを広げる

 働かないおじさんを脱したい人にとって大切なのは、主体性を取り戻して会社員以外の「もう一人の自分」を作り始めることではないかと考えています。

 そのためには身銭を切る、社外の人との付き合いを広げる、会社の枠組みの外で楽しみを見つけるなどの行動が求められます。

 この「もう一人の自分」を育てることが先ほどの「こころの定年」を乗り越えることにも重なります。「こころの定年」は老年期を充実して過ごすための通過儀礼でもあるので、ここを乗り切れば、70歳くらいまでは現役でやっていけるというのが、定年後の人たちへの取材を重ねてきた私の実感です。

〈最後に前出の白河氏は、働かないおじさんたちにこんな「試み」を勧める。〉

 培ってきたスキルや過去の体験が役立つとよくいわれますが、DX化やグローバル化など、ここまで環境が激変すると、むしろこれまでの経験が足かせになってしまうことが往々にしてあります。今までの蓄積を一旦リセットし、まっさらな状態になって自分を見つめ直して、新たなスキルを習得する努力が大切だと思います。

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