「働かないおじさん」は当人を責めても意味がない? 背景に日本型雇用システムが…企業側の対処法は?

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労働環境の悪化の原因にも

 変化を拒む働かないおじさんは、企業にさまざまな弊害をもたらします。例えば彼らは、昭和の価値観を引きずり、自分がどれだけの時間を企業に捧げてきたかで価値を測ろうとする。これを放置しておくと、長時間労働こそが命という古い価値観は変わらず、労働環境の悪化を招きがちです。

 威厳を保つためか、いつも不機嫌な顔の人も多い。職場内に不機嫌な人が増えると「心理的安全性」の低下につながります。これは、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した心理学用語で、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態のことです。

 この心理的安全性が高い組織は、間違いを認めやすく、互いに協力し合い、新しいチャレンジを厭(いと)わない人が増える傾向にあり、必然的に生産性の向上に結びつきます。ところが中高年の社員は、組織内の上意下達に慣れてしまい、対等な議論やコミュニケーションを苦手とする傾向がある。そこからイノベーションは起こりづらく、生産性は上がりません。まずは、この現実を理解する必要があります。

会社から放り出せば問題は解決する?

 その上で、なぜ働かないおじさんが生まれたのか。ここまで働かないおじさんと言ってきましたが、これは年齢や性別を問わず、「変化に対応できない人」の総称でもあります。ではなぜ、あえて「おじさん」と言うのか。それは、ほとんどの日本企業のボリュームゾーンがまさにおじさんだからです。最大のボリュームゾーンが45歳前後である企業が多く、おじさん中心の企業になっているケースが目立つのです。

 高度成長期に大きくなり、世の中から優良企業と見られている立派な会社でも、組織全体が年老いているところが少なくない。こうした企業を、私は「昭和レガシー企業」と呼んでいますが、このおじさんたち、働かずに動かないおじさんたちを変えない限り、日本企業は変わりません。

 では働かないおじさんたち、つまり固定観念が強く、変化を拒むおじさんたちを放り出してしまえば問題は解決するのか。答えは「ノー」です。より正確に言えば、そんなことは不可能でしょう。

 まず、超高齢社会を迎えている日本においては、彼らにもまだまだ働いてもらわないと社会が成り立たないからです。そして彼らが強いられてきた「昭和型の働き方」は、女性が専業主婦、パートタイマーになることを前提としていた面があります。つまり、働かないおじさんを企業から追い出すことは、その家族も含めて路頭に迷わせることになり、社会全体を不安定にすることになるのです。

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