妻の「プラトニックな不倫」に悶々… 45歳「夫」が相手の男性と意を決して面会した結末

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意を決して「部長」を呼び出したが…

 好きでたまらないのに関係は持たない男女。互いに自分を律しているのか、心がつながっていれば肉体はどうでもいいと思っているのか……。俗物には理解しがたいが、おそらく璃奈さんと“部長”は、他人の想像を超えた精神的なつながりがあるのではないか。どうしてもそう考えてしまう。

「僕もそう思いました。その後、何かの折に妹と話していたら、『璃奈さんは大人だから』という言い方をしたんですよ。『同い年だけど、彼女はものすごく自立している。精神的にも大人だよ、おにいちゃん、太刀打ちできないでしょ』と。璃奈は部長との関係を妹にも話してはいなかったけど、いい上司に恵まれているという話はしていたらしいんです。部長はどうやら璃奈より10歳くらい年上、社内外でも人格者として人望が高い人だそう。そんな人が人妻と恋愛するのかと僕は急に腹が立ってたまらなかった」

 どう考えてもはらわたが煮えくり返る。相手の部長への憎悪だけでなく、妻への失望も大きすぎた。悩み抜いた末、遼太郎さんは、その部長に会いにいった。

「昼休みに会社近くから電話をかけて呼び出しました。彼はすぐ外へ出てきて、『ランチ、まだでしょ。おいしいところがあるんですよ』と近くのシティホテルへと案内してくれました。『店よりここのほうがいいですよね』と広いラウンジに席をとってくれた。『妻がいつもお世話になっています』というと、『いえ、こちらこそ』とは言いましたが、少しいぶかしげな感じでした。『私、遠慮なく言いますが、私が一緒に働いているのはあなたではなく、璃奈さんです。あなたにお礼を言われる義理はありません。妻の上司に夫がお礼を言ったり、夫の上司に妻が下から出るみたいなことがどうしても好きになれないんです。失礼なことを言っていたら申し訳ないけど』とにこやかに言うんです。彼は妻と夫には、それぞれの人格がある。配偶者とはいえ口を出すなと言いたかったのかもしれません」

 その言葉と存在感に圧倒され、遼太郎さんは結局、妻との関係を聞き出すことはできなかった。そして相手の部長は「どういう用か」を聞こうとしなかった。遼太郎さんは「敗北感」にまみれた気持ちだったという。

「仕事上の関係があるから会うなとは言えない、かといって男女の関係にはないといっているふたりを裁く権利も僕にはない。でも明らかに妻はあの部長と恋愛関係にあるんだと思います。いい男でしたよ、僕から見ても」

 妻は今もときどき残業だと言って遅くなることがあるが、家庭に波風は立っていない。遼太郎さんは憎悪や失望を胸にしまいこみ、「もっといい男になるしかない」と思っているようだ。

「逃げかもしれませんが、今は子どもたちを優先的に考えながら生活していこうと思っています。妻が自由を謳歌したいなら、それはそれでいい。お互いに多少は自分のための時間も必要でしょうし。妹は就職したので、もうそんなにあてにできない。ふたりで親としてがんばっていこうという話は璃奈ともしました。まあ、今も寝室は別のままで夜の生活はありません。僕もそれには慣れてしまったのでもういいんですが、10年後に、夫婦関係がどうなっているのか、妻はどういう結論を出すのか。それはとても興味がありますよね。他人事みたいな言い方ですけど、そう考えないとやっていられないから……」

 夫婦であっても心までは縛れない。本当の思いを知ることもできない。それが「夫婦という他人」の限界なのだろうか。悶々としながらも、遼太郎さんはなんとか日々の生活に「明るい光」を見ようとしている。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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