患者数400万人「軽度認知障害」過度に恐れるのは… 診断されたらどう過ごせばいい?

ドクター新潮 医療 認知症

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家事や趣味を持たない人は要注意

 実は予防法や発症後の対応に限っていえば、MCIと認知症の違いはほとんどない。治療に関していうと、後者ならアルツハイマーの薬を処方するかどうかという判断がありますが、予防法に関しては変わりません。

 いざ認知症を発症してしまうと、家事や身の回りのこと、趣味など、習慣的にやることが何もなかった人は、さらに症状が悪くなる恐れがあります。たとえば、お風呂掃除を日常的に行っていたとするなら、認知症になっても継続してやるべきです。症状の進行を緩やかにするためにも、脳の活動を絶やさないことが大切なのです。

 認知症の予防ですべきことは?と、よく尋ねられるのですが、私はこう答えています。

「認知症になった時、続けられることを探しておく」

「認知症になったら、どういう生活を送りたいかを考え、周囲に伝えておく」

 治療する段階で困るのは、もともと仕事以外は何も家事や趣味などを持たない人なんですね。認知症になってしまい仕事もできなくなり無趣味だった人は、本当に家でボーっと過ごすしかなくなる。事前にできる最善の予防策は、日頃から身体を動かしたり、やるべきことがあるという習慣をつくっておくことでしょうか。

目標にすべきは日常の習慣や趣味を楽しむこと

 認知症になると、どうしても記憶力が低下することばかりに目を向けて、必死に回復させようとジタバタしてしまう。よく私は患者さんに「記憶力のテストのスコアを下げないことを目標にしないで」と言っています。目標にすべきは日常の習慣や趣味など楽しいと思えることを一生懸命やること。日常生活のすべてはさまざまな認知機能の組み合わせで成立していますので、記憶力が低下したとしても運動機能など他の部分が補ってくれることで、今まで通りの生活を維持できるように我々の身体はできています。

 どういうことかといえば、医学誌「ランセット」に掲載された、フィンランドで行われた世界で最も有名な認知症予防の研究で、興味深い報告があります。

 生活習慣病にならないように食生活や運動をこなすなど気を遣い、また外国語の勉強をはじめとする認知機能のトレーニングなども欠かさなかったグループと、まったく何もしなかったグループを比較して、経過を見ながら認知機能のテストを行った結果です。

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