離婚したいが相手の顔を見たくない…離婚調停のウェブ会議導入に賛否両論

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 夫婦が一度も顔を合わせないで、離婚できるようになる。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う利便性の向上やDV被害者の心理的負担の軽減を目的に、政府は離婚調停の全過程においてウェブ会議の導入を認める方針を打ち出した。離婚を考えている夫婦にとっては、朗報なのか、もしくは改悪なのか。経験者に話を聞いた。【上條まゆみ/ライター】

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コロナ禍で進んだウェブ会議

 夫婦の3組に1組が離婚していると言われる時代。2020年の離婚件数は、19万3251組にも達した。9割以上が話し合いのみで離婚を決定する協議離婚だが、決着がつかない場合は離婚調停(夫婦関係調整調停)に持ち込まれることになる。

 離婚調停は、調停委員2名と裁判官1名で構成される調停委員会が、申し立て人と相手方の話を交互に聞く形で進行する。コロナ禍で裁判所もウェブ会議の導入が進み、裁判所まで出向く必要がなくなっていたが、離婚に同意するか否か最終的な意思を確認する場面においては、双方が出頭し、調停室で対面する必要があった。

 その規定が見直されるというのである。当事者にとってはどうなのか。

顔も見たくない

「離婚したいほど嫌な相手と顔を合わせずに済むなら、そのほうがいいに決まっています」

 こう賛成するのは、神奈川県在住の石井智子さん(仮名・43歳)。5年前、離婚調停を経て離婚した。

「元夫は歩合制の営業職。仕事がうまくいかないという理由で、生活費を入れてくれなくなりました。しばらく私の稼ぎでやっていたのですが、借金を重ねている様子を見て、このままじゃ家計が破綻してしまうと、離婚を提案。元夫も同意したので協議離婚でもよかったのですが、当時5歳の子どもの養育費や面会交流のことなどをきちんと決めておきたいと思い、調停を申し立てたのです」(石井さん)

 調停は養育費の額などで揉め、月1回ほどのペースで1年ほどかかった。調停での元夫の言い分が、あまりに誠意がないと石井さんには感じられた。家族としての責任からとことん逃げようとする姿勢が情けなく、最終的には顔も見たくないほど嫌いになった。

「調停最終日、裁判官が読み上げる調書条項を確認する際に元夫と同じ部屋に入ったのですが、同じ空間にいることが不快でたまりませんでした」(石井さん)

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