離婚したいが相手の顔を見たくない…離婚調停のウェブ会議導入に賛否両論

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

懸念される形骸化

 家庭内の紛争などの家事事件にくわしい栗原務弁護士は、この法改正案に基本的には賛成だとしながらも、次のように語る。

「そもそも、いまの家事調停は、当事者同士の話し合いを支えるという本来の目的が、ほとんど機能していないように感じます。日本は調停をしたうえでないと離婚訴訟に進めないシステムになっています。調停を離婚訴訟に進むためのやむを得ないプロセスとして捉え、仕方なしに形を整えるためだけに申し立てをし、きちんと話し合いをする気がない当事者もいます。そういう人が『話し合っても無理だと思います』などと言うと、調停委員のなかには、どうせ合意に至らないのだから話し合っても無駄であるとして、すぐに調停を不調として終わらせてしまおうとする人も少なくないのです。Web会議が普及すると、手続きがより簡単にすまされるようになり、これまで以上に形骸化してしまうことが懸念されます」

 政府は、家事事件手続法改正案を3月上旬にも提出する方針だ。離婚という人生の重大な局面を、利便性だけで簡略されることがあって良いのか。当事者の気持ちが置き去りにされないよう、慎重な議論が望まれる。

上條まゆみ(かみじょう・まゆみ)
ライター。東京都生まれ。大学卒業後、会社員を経てライターとして活動。教育・保育・女性のライフスタイル等、幅広いテーマでインタビューやルポを手がける。近年は、結婚・離婚・再婚・子育て等、家族の問題にフォーカス。現代ビジネスで『子どものいる離婚』、サイゾーウーマンで『2回目だからこそのしあわせ~わたしたちの再婚物語』を連載中。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。