「仕方なくクロカンをやっていた」 レジェンド「葛西紀明」が語る原点と次世代のスターとは?(小林信也)

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スリップ病

 その葛西が34年後も現役で飛び続けている。残念ながら、2月の北京五輪の代表には入れなかった。

「今回は割り切っています。いまはスリップ病で思い切り飛べないから」

 葛西が面白い表現をした。

「ジャンプする時、どうしてもスリップするんです。氷の上で立ち幅跳びすれば少し滑るでしょ。あれと同じです。わかっていても直せない。スリップしない人がいちばん強い。スリップが気になったら5、6割でしか飛べない。8割で飛べたら十分です。それなのに、ほぼ10割の力で飛べるのが小林陵侑なんです」

 北京五輪で金メダルを期待される、同じチームの小林の名を葛西が挙げた。

「2017年の夏の合宿かな。スリップしない飛び方を陵侑に教えた。教えてもできない選手はずっとできない。なのに陵侑は、2本目か3本目でできてしまった」

 そして18─19年シーズン、W杯6連勝を含む年間13勝で世界のトップに躍り出た。今季はすでに6勝。W杯通算25勝目を挙げた。北京五輪では小林陵侑の足下に注目して応援したい。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2022年1月20日号掲載

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