「自衛隊の名称を国防軍とするべき」 前統幕長、元陸幕長が語る憲法改正

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石原莞爾の“真意”とは

 仮に軍師・石原が存命なら、今日の国防国策をどう見るだろうか。終戦後の彼はGHQの手による新憲法を読み、9条の戦争放棄を歓迎した。が、その“真意”について「石原莞爾平和思想研究会」元事務長の山崎八九生氏は、こう話す。

「“戦争を放棄して経済を優先する”という意味として捉えていたはずです。ところが、今日の中国はすっかり覇権主義化しました。石原は、日本としては相手国が侵略できないほどの戦力を蓄え、場合によっては“核を撃ち込むぞ”くらいの姿勢で外交に臨むべきだ、と言いたかったのではないか。そう解釈しています」

 本誌21年9月16日号「変見自在」で高山正之氏は、日露戦争後にメキシコで起こったクーデターについて記している。大統領夫人を保護した日本公使が、公使館を包囲する処刑部隊に対し〈日本と戦争する覚悟で我を倒し、日の丸を踏んで乱入するがいい〉と叫び、相手は公使の背後に見える「強い日本」に気圧されたというのだ。

「逃げ足の速い日本外交官」と揶揄

 翻って現在、防衛と不可分の関係にある外交を司る外務省といえば、はなはだ心許ない。何よりも昨夏の在アフガニスタン日本国大使館がよい例である。カブール陥落2日後の8月17日、大使館の職員12人全員が英軍輸送機に便乗してドバイへと退避した。連絡係もいないため外務省は現地の情報が収集できず、防衛省への輸送依頼も遅れた。約500人にのぼる大使館及びJICAなどのアフガン人職員とその家族らが置き去りにされ、27日になって救出されたのは日本人女性1人。この件では世界から「逃げ足の速い日本外交官」と揶揄されている。

 そうした“苦境”にあっても自衛隊員は専守防衛、攻められても直ちに「血を流す反撃」ができないのは先述した通り。自衛隊の姿が世間で際立つのは、現在はもっぱら大規模災害時であるが、「災害自衛隊」と言われながらも、その存在を90%の国民が認めている。が、今もって認めたがらない化石のような人たちがいるのも事実である。

 あるいはミサイルでも撃ち込まれない限り、国民は目覚めないのかもしれないが、それでは遅すぎる。おのおのが「平和のための国防意識」を持った上で、国には即応態勢の構築が望まれるところではないか。

早瀬利之(はやせとしゆき)
作家。昭和15年、長崎県生まれ。昭和38年、鹿児島大卒。著書に『タイガー・モリと呼ばれた男』『石原莞爾 満州ふたたび』『敗戦、されど生きよ』などがある。

週刊新潮 2022年1月13日号掲載

特集「『改憲』気運の折 『前統幕長』 『元陸幕長』『識者』に聞いた まやかしの『自衛隊』私はこう考える」より

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