「自衛隊の名称を国防軍とするべき」 前統幕長、元陸幕長が語る憲法改正

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「国際的には通用しない」

 サンフランシスコ講和条約が発効してから60年にあたる12年4月、野党だった自民党は「憲法改正草案」を発表。その中では「自衛権の発動を妨げるものではない」とし、首相を最高指揮官とする「国防軍」の保持を謳っていた。また、外部からの武力攻撃や大規模な自然災害などの際には、首相の権限を強める緊急事態条項も新たに設けていた。

 その後発足した第2次安倍内閣では、集団的自衛権の行使を容認。自民党も18年3月、9条に自衛隊を明記するなど「改憲4項目」の素案を公表した。が、安倍晋三首相(当時)自ら“新しい憲法が施行される年にしたい”と位置付けていた20年にはあえなく頓挫している。

 それでも昨年10月の総選挙では、維新が躍進したことで「改憲」が現実味を帯びつつある。現に岸田文雄首相も年頭所感で憲法改正を「本年の大きなテーマ」と位置づけ、議論を喚起していく姿勢を示したところである。

 そこで今回、急遽9条に関して識者に意見聴取、あわせて自衛隊の改名の是非についても尋ねてみた──。

 前出の冨澤氏に聞くと、

「自衛とは英語でセルフ・ディフェンス。つまり護身術のことで、自衛隊は護身術によってわが身を守る隊と解釈されます。私が米国に留学中、アーミーでなく自衛隊だと言ったら米国人から“軍隊は国家を守るためにあるのに、日本には自分の身を守るための軍隊があるのか”と笑われました。国際的には通用しません。ぜひ国防軍、せめて1文字だけでも変えて“防”衛隊としてほしいものです」

 続けて前出の河野克俊・前統幕長は、

「第一歩としては“自衛隊の明記”でもいいのですが、本来は『国防軍』が相応(ふさわ)しいと思います。9条にはたった1行、『日本は国防軍を持つ』と書き足せばよく、あとは要らないのではないでしょうか。“名は体を表す”の通り、これでまず隊員の意識が変わります。法律体系によって軍隊とすることで、これまでの“ごまかし”に終止符が打たれるわけですから、徐々にいい方向へ進むと思います」

「名前より実体が大事」という声も

 一方、自衛隊OBで漫画原作者でもあるプロゴルファーの坂田信弘氏は手厳しい。

「私は2年間いましたが、純粋な国防意識と覚悟を持つ人が多かった。自衛隊という名は美しく、変える必要はありません。それに比べて日本の政治家は不純です。防衛は政治家の使命であり、義務だと思います。政治家にも軍事訓練を受けさせるべきで、いざ戦争となったら、政治家が率先して前線に立つ覚悟をもってもらいたい」

 さらに軍事雑誌「丸」の元編集人・牛嶋義勝氏は、

「憲法との兼ね合いで自衛隊は“戦わない”ことを前提としています。国防軍となると徴兵制度が始まる可能性もあり、軍が災害救助に携わらなくなれば、志願者は激減するのではないでしょうか」

 そう危惧する。また、

「名前は二の次で実体が大事です。今さら新たにネーミングを行えば、無用なトラブルを招きかねません」

 と指摘するのは、防衛大学校名誉教授の田中宏巳氏(近代日本軍事史)。

「肝心なのは、このままの形で国防に必要な機能を持つこと。そもそも、呼称を変えようという声は20~30年前からありました。旧軍に倣い“一佐を大佐に”といった案も出ていたのです。それでも、自衛隊はすでに国民の間に定着しています。何でも米国の意向になびく必要はありません」

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