変わる「福岡」のラーメン事情 “非豚骨”の店の数が“豚骨”の店を上回る

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独自の味噌ラーメンを作り上げた「博多川端どさんこ」

 福岡県のご当地グルメは数あれど、まず最初に思い浮かぶものは豚骨ラーメンではないだろうか。筆者も福岡県出身だが、豚骨ラーメンは子どもの頃からよく食べていた。逆に福岡では豚骨以外のラーメンを店で食べた記憶がない。そんな“豚骨王国”福岡だが、豚骨以外のラーメンの店も数は少なからずある。店主たちは一体なぜ、福岡で豚骨以外のラーメンを出したのか。取材を進めていくと、福岡のラーメン業界にいま“地殻変動”が起こっていることがわかった。【徳重龍徳/ライター】

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 福岡では豚骨ラーメンがあまりにメジャーなため、地元メディアなどでは豚骨以外のラーメンを「非豚骨系」と表現する。その言葉ができるずっと前、1970年から『博多川端どさんこ』は中洲川端の川端通商店街で味噌ラーメンを提供してきた。

 店を切り盛りするのは二代目店主の岩永太郎さん。『どさんこ』は岩永さんの父・倫夫さんと、福岡で知られた有名店『名物ちんめん あま太郎』の社長が創業し、その後に倫夫さんが買い取ることになった。

「創業から2年くらいはなかなかうまくいかなかったようなんですが、(1975年に)博多駅まで新幹線が来るようになると、出張や転勤であったりと味噌ラーメンを食べる人たちがほかの場所からやってきた。そこから徐々に売れるようになったと聞いています」(岩永さん)

 味噌ラーメンは一般的に濃厚な味が多いが、『どさんこ』は丸鶏と豚骨、野菜の甘味がたっぷり入ったスープで味噌ダレを割り、優しい味に仕上げている。

「先代が始めたころは北海道寄りの味噌ラーメンだったんですが、地元のお客さんが多かったこともあり、徐々に博多の人の好む味に育てられていきました」(岩永さん)

 以前は看板に『札幌』と入れていたが、今は外している。調味料などは味噌を含めてすべて九州のものを使っている。『どさんこ』の味噌ラーメンは博多でしか食べられない独自の味噌ラーメンだ。

 福岡の人間の気質は“新しいもの好きだが、飽きっぽい”。かつて札幌味噌ラーメンの有名店が福岡に出店したことはあったが、すぐに撤退を強いられた。一方、福岡で愛された『どさんこ』は、中洲川端の本店以外に博多駅にも店舗があり、さらに3店目の開業も予定されている。それでも岩永さんにおごりはない。

「忙しくさせてもらってますが、福岡、博多の街は豚骨の文化。これからもニッチなところで商売させていただこうと思っています(笑)」

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