高知東生のいま 本人が語る「歌手の鞄持ち」「小説執筆」「自助グループ」参加

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「妄想」を気にしてしまう自分自身の姿

「師匠の言葉は、自助グループの仲間が言ってくれたことと同じなんだよね。それは『最善を尽くす』ということ。誰とも比べなくていい。自分のなかで最善を尽くすという気持ちでやればいいんだって。だって、誰かに憧れてもその人にはなれないんだから。それで俺はちょっと楽になったんだよね。結果を出そうじゃなくて、自分にとって最善を尽くそうって言うようにしている」

 回復への道のりは常にゆっくりであり、アップダウンの繰り返しだ。回復の途上で見えてきたのは、彼の言葉で言えば、「妄想」を気にしてしまう自分自身の姿だった。なんでも完璧にこなせる自分を妄想してしまい、失敗しそうなこと、うまくいきそうもないことのチャレンジを恐れる。

 発表を続けている小説へのチャレンジもその一つだ。自叙伝を読んだ編集者が高知に小説を書かないか、と提案してきた。しかし、仕事の窓口になっている田中が挑戦を促しても、最初にこぼす言葉はネガティヴなものばかりだった。本当はチャレンジしたいと思っている自分がいるにもかかわらず、「無理でしょ」「台本以外の本なんて読んだことない」と、自分を否定する言葉から入る。原因は自尊心の無さ、出てくる言葉はそれの裏返しであると気づき、少しずつ「最善を尽くそう」へと変化していった。

「今は自分のなかで自尊心が低い古い俺と、そうではなくなった新しい俺がちょうど半分、半分くらいになったかな。自尊心の低さは、良い意味ではハングリー精神でもあったわけで、俺の原動力でもあった。おふくろのようにはなりたくない、もっと完璧を目指したいと思って、それで少しは成功したんだから、いきなりすべて新しい発想になるのは難しいよ。師匠のステージでも、小説でも『完璧にやらないと』と古い俺が出てきたら、『いやいや、そういうところだぞ。大事なのは自分にとって最善を尽くすこと。結果はあとからだ』と言う新しい俺がでてきて、ちょっと待てと言ってくれる感覚だね」

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