高知東生、清原和博からヤクザまで ヒトがシャブに手を出す様々な事情
快楽だけが目的か
一昨年はASKA、今年は清原和博、高知東生と、覚せい剤で逮捕される有名人は後を絶たない。
覚せい剤、通称「シャブ」が違法であることはわかり切っているのに、なぜそれでも手を出してしまうのか。
往々にして逮捕された有名人は、公判などにおいて、その理由について「自分の弱さ」「孤独に負けた」等、オブラートにくるんだような物言いをするのだが、それを鵜呑みにする人は少ないだろう。多くの場合、彼らが快楽を求めて手を出したことは火を見るよりも明らかだからだ。
では、それを供給する側、ヤクザがシャブに手を出す理由は何か。もちろん、同様の快楽目的という面もある。犯罪社会学者の廣末登氏は、10代でシャブと出会ったという元ヤクザがシャブについて、
「こんないいもんがあるなら、酒も女も止めやと思った」
と話すのを聞いたことがあるという。
もっとも、ヤクザがシャブに手を出すのには、快楽目的以外の理由もあるのだそうだ。廣末氏は新著『ヤクザになる理由』で、その理由を明かしている。同書の「ヤクザとシャブ」の項にある、別の元ヤクザらの生々しい証言を紹介してみよう。
断りきれない
「ヤクザはね、シャブやんないといけない場面があり、二つの理由から(シャブの使用は)止むを得ない事もあるんだよ。
一つは、部屋住みの時(住み込みで雑用をやる時期)ね、若い衆は寝る時間がないんだよ。だって、親分が外出するのは夜でしょ。車の中で待ってなきゃなんない。でも、この間は眠たいんだよね。
それと、もう一つの理由。それは、兄貴分から勧められるんだよ。でもね、嫌とは言えないでしょ。だって、ヤクザは親(分)の為に命捨てる覚悟がいるんだからね。そこで断ったりしたら『何やお前、命、組に預けたんちゃうんかい。死ぬんが怖いんか』って言われるよ。だから、ヤクザになると嫌でもシャブやんなきゃなんないんだよね」
要は「目覚まし」と「上下関係」が理由だ、と言うのである。
子どものためにシャブ?
さらに、「足抜け」にシャブを使った、という例もあるという。表向き、ヤクザの組織ではシャブはご法度。バリバリの博徒であったあるヤクザは、子どもが生まれて組を抜ける際、あえて覚せい剤を濫用したというのだ。
「(シャブに手を出したんは)現役の頃や……ちょっとこれには訳があるんや。実はな、わしの現役の頃に友人が居った。新聞社の人でなあ、いい人やった。この人が子どもの育て方わしに教えてくれたんや。わし自身、子ども時代不遇やった、その人の話聞いてな、わし次第に組抜けたい考えるようになったんや。方法を色々考えたんやが、その方法がシャブやった。わしら博徒や、シャブでボロボロなったら博徒は務まらん。それで破門してもらったんや」(『ヤクザになる理由』より)
実際に、この証言者は、中毒を理由に破門されてカタギに転向している。もちろん、だから「シャブを使う意義がある」などと考えてはならない。
シャブの語源は「骨までシャブる」から来ているという。ハマってしまった人の人生すべてを蝕むものであることは、先に挙げた有名人らを見ても明白だろう。どのような理由、事情があろうともシャブに手を出してはいけないのは言うまでもない。