事件現場清掃人は見た 7年前に孤独死した「50代男性」を発見してタダ働きさせられた件

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、ゴミ屋敷の中で孤独死していた50代男性について聞いた。

 高江洲氏はこれまで、ゴミ屋敷となった現場で想像を絶するものを発見してきた。今回ご紹介するのは、白骨化した遺体を見つけた話だ。

「知り合いのアパートの大家さんから依頼がありました。夜逃げした50代男性の部屋がゴミ屋敷となっているので、まずは清掃の見積もりを出して欲しいと言われました」

 と語るのは、高江洲氏。

「大家さんは、農業の他に不動産をいくつか持っていました。築50年の木造アパートで、家賃はそんなに高くはないでしょう。そのためあまり清掃や修繕などをしていなかったようです」

部屋に自転車とリュック

 ゴミ屋敷となった部屋は長い間放置されていた。

「大家さんから、男性が夜逃げしたのが7年前だったと聞いてびっくりしました。近隣から苦情もでなかったので、そのまま放置していたそうです。他の部屋もほとんど人は住んでいないと言っていました」

 高江洲氏は、早速アパートへ向かった。

「大家さんに、男性が逃げた後部屋の中を確認しましたかと尋ねると、確認したと言っていました」

 高江洲氏は大家を伴って部屋の扉を開けた。

「玄関の近くにミニキッチンがあり、その脇に自転車とリュックがありました。嫌な予感がしました。夜逃げする人が自転車やリュックを残していくはずがないからです」

 間取りは4畳半と6畳で、トイレがあり風呂はなかった。

「キッチンのまわりには、コンビニ弁当のゴミが散乱していました。2つの部屋にはゴミが天井近くまで積もっていて、奥に行くことができません。ただ、ゴミの山には谷間があって、そこを注意深く覗いてみると、人間の膝小僧らしき骨を見つけました」

 すかさず高江洲氏は、大家を呼んだ。

「大家さんに『夜逃げではありませんよ。あそこを御覧なさい。骨らしきものが見えるでしょう。男性は孤独死していたんですよ』と言うと、彼は真っ青になりました」

 さすがに7年も経過していると、遺体の腐敗臭はほとんどなかったという。

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