不倫夫たちの「クリスマス」悲話 地元から離れて密会したら…思わぬ形で妻にバレた

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クリスマスディナーが一転、“最後の晩餐”に…

 ところが下へ降りようとエレベーターの前へ行ったとき、「あ」という大きな声が聞こえた。

「おじさん、とつかつか寄ってきたのは、妻の従兄弟でした。そうだ、彼は大学生で東京にいるんだった、と気づいたけどもう遅い。彼女はすっといなくなりましたが、従兄弟は『どうしたの、おじさん。出張?』と。う、うん、まあねと言うしかなかった。ここで口止めするべきかどうか迷ったんですが、言い出せなかった。『誰かいたよね』と言われて、ちょっと仕事先の人がとモゴモゴ言っていると、従兄弟はじゃあまた、と。後ろで彼女らしき女の子がお辞儀をしてくれましたが、僕としてはもうどうしたらいいかわからなかった」

 いつしか隣に戻ってきた咲紀子さんに、「大丈夫?」と声をかけられてようやく我に返ったという。事情を説明すると、「どうする? 帰る?」と言われたが、今さら自宅に帰るわけにもいかない。バレたらそれまでと思うしかなかった。

「ヤケですよ。その日は咲紀子とホテルのレストランで思う存分、おいしいものを食べ、夜はにぎわっている町でいいバーを見つけて、ふだん飲まないような高い酒も飲みました。最後の晩餐みたいな気分でしたね。夜はずっと咲紀子とふたりでイチャイチャし続けました」

 苦い笑みを浮かべながら啓吾さんは振り返った。

 帰りの新幹線も別々のはずだったが、啓吾さんは「もういいよ、一緒に帰ろう」と言った。隣同士に座り、お弁当を半分こにして食べ、周囲に迷惑にならない程度の声でしゃべり続けた。

「駅に着いて、さすがにそこから地元までは一緒だとまずいので握手して別れました。もしかしたらもう会えないかもしれないとふたりとも思っていた。彼女の手がひどく冷たかったのを覚えています」

 自宅に戻ると、ちょうど夕飯をとっているところだった。「あなたも食べる?」と妻がごく普通の表情で聞いてきたが、彼は「いや、駅弁食べてきた」と冷静を装って答えた。

「そうだ、東京へ行くことは妻にも伝えてある。従兄弟が東京タワーで会ったと言っても、久々に東京へ行ったから上ってみたと言えばいいんだと気づいたんです。必要以上にビビることはないんだと自分にカツを入れました」

 従兄弟が咲紀子さんを認めていたかどうか、怪しい雰囲気を悟っていたかどうかが問題だが、相手は大学生だ。気づいていないほうに賭けようと決めた。

「それでも正直言うと、3日くらいは食べるものの味がしないくらい緊張していましたね。隠れてこそこそすると、こういうことになるんだよなと反省もしました。だけど1週間もすると、どうやらバレてないとわかったため、咲紀子に会いたくなりました」

 懲りない男である。

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