妻の連れ子に迫られて…狂った「再婚サラリーマン」の家庭生活 そして残った大きな謎

  • ブックマーク

Advertisement

ミステリーのような

 数ヶ月間、彼はどういう態度で娘と妻に接したらいいのかわからなかった。妻は何かを知っているのか知らないのか。娘は彼とふたりきりになるのを避けているように見えた。要子さんからの連絡は途絶えた。

「この家族から離れたい、息子と出て行きたいと思うようになりました。ここにいたら自分が自分でいられない。そんな気持ちでした」

 思い切って妻に離婚を切り出した。妻は驚きもせず、「浮気は? 終わったの?」と言った。やはり娘は話していたのだろう。そして、透さんはすべてをしかけたのは娘だとも確信していた。娘は透さんが疎ましかったのだ。大好きな母をとられたような気持ちになっていたのだろう。

「彩乃に、オレと娘、どちらを信じるのかと聞きました。彩乃は『娘』と即答。それなら何も聞かずに別れてほしいというしかなかった。僕にも要子と関係をもってしまった負い目がありました。なんだかんだ言いながら、要子の体に溺れたのも事実。おそらく要子は娘の先輩か何かで、僕を陥れるために協力した。ストーカー云々は要子が僕に近づくための嘘だったのでしょう。娘に問いただすことはできなかった。義理の関係だということに気を遣いすぎたのかもしれないけど、10代の女の子の気持ちは遠すぎた」

 彩乃さんは、「それなら何も持たずに出て行って」と言われたが、息子だけは連れていくと彼は言い切った。妻は何も言わなかった。

「すぐに2歳半の息子を連れてホテルで数日過ごし、アパートを借りました。どうやってこれから息子とふたりで過ごそうかと考えたんですが、うちの会社、社内に保育園があるので預かってもらえることになった」

 離婚届は郵送でやりとりをし、透さんが役所に提出した。その後、娘から電話がかかって来たが、透さんは出なかった。もうこれ以上、関わらないほうがお互いのためだと思ったのだ。娘をあんなふうにしたのは自分だとも感じていた。

「彩乃の気持ちもよくわからないんですが、その後、娘が大学に無事、入学したという連絡が来たことがあります。おめでとうと一言だけLINEを送りました。もしかしたら、彩乃は娘がしでかしたことを薄々、わかっているのかもしれないとそのとき感じましたね。だけど彩乃も何も話せないのではないか。話せない事情はわかりませんが……。わからないことが多すぎるんですが、息子が生まれたところまでは再婚とはいえ、ごく普通の家庭生活だったはず。どこからどうしてこんなことになったのか……」

 解けないミステリーのような話だ。もしかしたら彩乃さんの前の結婚生活にも何か秘密があるのだろうか。母は娘に遠慮しなければならない理由があるのだろうか。いずれにしても、娘にとって自分は“異物”だったのだろう。だからといって、あんな手の込んだことをしなくてもよさそうなものだと、透さんも感じている。

「もしかしたら、ですけど、もしかしたら息子も僕の子ではないのかもしれない。そんなふうに思うこともあります。でもDNA鑑定などはしません。息子は僕の子としてちゃんと育てていくつもりです」

 ミステリーはまだ続いているようだ。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 2 3 4 5 6 次へ

[6/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。