愛知中3刺殺事件、明かされぬ動機に迫る 加害少年の祖父は「内気な子でしたから」

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 14歳の少年が殺害した相手は幼なじみの同級生だった。用意した凶器は、和食の職人が使うことで知られる柳刃包丁。刺身を切るための細く鋭い刃先が特徴だけに、明確な殺意を持っていたことが窺える。犯行動機を探る手がかりは「修学旅行」にあるというのだが……。

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 目の前でもがき苦しむ同級生をみて、“自分は何をやっているんだろう”と思い我に返った――。11月24日、愛知県弥富市立十四山(じゅうしやま)中学校の3年生・伊藤柚輝(ゆずき)くん(14)が殺害された事件。殺人容疑で送検された14歳の加害少年は、取り調べでそう語っているという。

 事件当日、現場となった中学校では1時間目の授業が始まる直前で、加害少年はクラスの違う伊藤くんを廊下に呼び出して、刃渡り約20センチの柳刃包丁で腹部を一突きした。

 地元記者によれば、

「刃は肝臓や脾臓にまで達し、大動脈が損傷したことが致命傷となったようです。死因は出血性ショックで、凶器は事前に加害少年が母親のアカウントを使いネット通販で購入。リュックサックに隠し中学校まで持ち込んだことが捜査の過程で分かっています」

 中学校を舞台にした同級生間の殺人事件ということで、事件直後からネットでは加害少年が“LINEグループから外された”ことが動機だという類の噂が広まった。だが、ことの真相はそう単純な話ではない。

 先の記者が続けて言う。

「県警は加害少年のスマホを押収して捜査を続けていますが、現時点でSNSを巡る仲間外れなどのトラブルは確認されていないそうです。むしろ逮捕された少年は、死亡した被害者について“伊藤くんが生徒会選挙に出た際、応援演説を頼まれたことが嫌だった”“伊藤くんが給食当番の時、すぐに箸を渡してくれなかった”“仲のよい友達との会話に割って入ってこられた”といった趣旨の供述をしているようです」

 各々の出来事は、およそ人に殺意を抱くほど決定的ではないように思えるが、被害者への鬱屈した感情を日々募らせていたのは間違いない。

いじめ相談を受け、別々のクラスに

 事実、加害少年は昨年度に、学校側が学期ごとに行っている生活アンケートの中で“いじめを受けている”と訴えており、教師は伊藤くんに対して「相手の気持ちになって行動しなさい」と注意を行っている。学校側の説明では、その後に嫌がらせをうけていないかと何度か確認したところ、加害少年から「大丈夫です」との回答を得てはいたが、念のため二人が3年生に進級するタイミングで、別々のクラスにする配慮をしたというのだ。

「少なくとも、地元の人間は“いじめがあった”とは信じていないと思います」

 そう話すのは、現場の中学校に娘を通わせている父親だ。

「自分も十四山中の出身ですが、あの学校は昔から1クラスの人数が少なくて、いじめが起きればすぐ先生が察知して問題になるような学校でした。土地柄、荒っぽいヤンキーとか不良っぽい子がいる中学でもないし、明らかないじめが起これば大人がすぐ気づけるはず。多感な年ごろでもあるので、逮捕された彼の思い込みによるところが多分にあるのではないか、そう思うんです。殴ったりけんかしたりするとか、何か兆候があれば事前に防げていたかもしれないのに、いきなり刺しちゃうとは……」

 そう困惑するばかりだが、現場の中学校に通い被害者と加害者の双方と面識を持つ地元住民はこうも言う。

「まるで殺されたユズがいじめたみたいに報道されているけど、それは違うと思う。自分の知る限り、ユズは他人に暴力をふるったりけんかをするようなタイプではありません。誰にでもフレンドリーで男女分け隔てなく付き合い、いじめるどころか他人を楽しませたいという気持ちの強い子でした。昨年、ユズが生徒会の執行部にいた時は“学年を超えて皆で仲良くなりたい”と言って、全校生徒を集めた球技大会を提案するなど、とにかくスポーツが好きだった。LINEのアイコンはユニフォーム姿でバットを振っている写真で、中学は野球部でしたが、小学校時代はサッカー部に入っていましたよ」

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