及び腰の韓国を米国は経済制裁で脅す 「西側経済圏」復活で「中国閉め出し」を図る

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 米国が「西側経済圏」を復活、中国閉め出しを図る。だが、韓国はソッポを向く。すると「それなら韓国にも制裁を加えよう」と米専門家は主張する。米中の新冷戦を韓国観察者の鈴置高史氏が読む。

韓国企業の中国工場に横やり

鈴置:極めて重要なニュースをロイターが打ちました。サムスン電子に次ぐ世界2位のDRAMメーカー、韓国のSKハイニックスに対し、中国工場の最先端化をやめるよう米政府が圧力をかけた、というのです。

 ロイターの「U.S.-China tech war clouds SK Hynix’s plan for a key chip factory」(11月18日、英語版)の前文を訳します。

・韓国のSKハイニックスがより効率的な生産を目指し中国での大型設備のグレードアップを計画中だが、これが危機に瀕した。関係者がロイターに語ったところによれば、先端製造装置の中国への搬入を米政府が拒絶しているから、という。

 SKハイニックスの中国工場は江蘇省・無錫にあり、同社のDRAMの半分を生産していると見られています。SKのDRAMの世界シェアは約3割ありますから、無錫工場は世界のDRAMの15%前後を作っているわけです。

 ロイターの記事によると、米政府が問題視したのはEUV(極端紫外線)露光装置。オランダの半導体装置メーカー、ASMLが独占的に供給していますが、米政府は中国企業への販売を止めてきました。

 その規制の網を非中国企業の中国工場にも拡大したのです。この装置のノウハウがSKの無錫工場経由で中国に流出するのを恐れたのです。

 EUV露光装置で製造するのは線幅がより細い、演算速度が速く省電力の最先端DRAM。これを中国が入手するのにも、一定の歯止めがかかることになります。

 朝鮮日報の「米、ハイニックス中国工場への先端装置搬入を阻止…韓国10余工場が非常事態」(11月18日、韓国語版)によると、SKハイニックスは「当面、無錫工場にEUV装置を設置する計画はない」と明かしています。

 米国の圧力を受け、中国での先端半導体の生産は棚上げしたということでしょう。SKはマザー工場である韓国・利川工場にEUV装置を導入済みですから、この工場か中国以外で能力を増強しないとシェア競争で後れをとります。ライバルのサムスン電子や米マイクロンは中国ではDRAMを作っていないからです。

中露外して供給網会議

――米政府は世界の半導体メーカーに対し、保有技術や販路などの情報を開示するよう求めていました。

鈴置:岸田首相から3匹目のドジョウ狙う韓国 米中対立で日本の『輸出規制』が凶器に」でその話は紹介しました。「米国の同盟国だけで半導体供給網を作る第一歩である」、「この半導体は中国で作るな、と命令できるようになる」と指摘しましたが、早くもそれが始まったのです。

 なお、「誰に何を売っているか、といった販路情報はサムスン電子やSKハイニックスは明かさなかった」と韓国紙は報じていますが、真相は不明です。

――米国は本気ですね。

鈴置:ローマで開かれたG20サミット(20カ国・地域首脳会議)の場を利用して、バイデン(Joe Biden)大統領はサプライチェーン(供給網)強化を図るための首脳会議を主催しました。

 バイデン大統領は「供給網の強化のための国際協力」を訴えましたが、中国とロシアは会議に参加していません。米国の同盟国と同志国を集めて再び、冷戦時代の「西側」を結成したのです。

 ホワイトハウスの発表資料によると、参加したのは米国以外に豪州、カナダ、コンゴ共和国、EU、ドイツ、インド、インドネシア、日本、メキシコ、イタリー、韓国、ニュージーランド、シンガポール、スペインの15カ国・地域でした。

福島正則かユダか

――韓国も参加したのですね。

鈴置:「米国側に付くのか、中国側に付くのか」と米国から踏み絵を迫られた、と多くの韓国人が感じました。中央日報の見出し「『汚い中国製』バイデン大統領が厳しくなった…サンドイッチの韓国はまたも試験台に」(11月2日、日本語版)が如実に示しています。
 
 保守系紙、文化日報は「同盟の最も弱い輪が韓国」と米国は見ていることが明らかになった、と評しました。「バイデンと岸田、忙しい日程でも『略式会談』…2つともできなかった文」(11月3日、韓国語)から訳します。

・バイデン大統領が牽制を強化し、我が国の政府を対中前線の前面に立たせる状況は負担となる部分だ。バイデン大統領は中国牽制の意図を露骨にした世界供給網首脳会談の場で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領を前の席に座らせ、自分の次に発言させるとの“配慮”を示した。

「中国の言いなりになっている韓国でさえ、米国側に付いた」芝居を演じさせたと見たのです。関ヶ原の戦いの直前の小山評定で、秀吉の子飼いだった福島正則に真っ先に「徳川様にお味方する」と宣言させたのと似ています。

 もっとも韓国は米国側に付いたつもりはないので、最後の晩餐でキリストから「私を裏切る者がいる」と暗に名指しされたユダの心境かもしれません。

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