「だしのプロ」が明かすダイエット効果 香りが脳の報酬系を刺激して満足感が

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味覚の食育

 こういった味覚の観点からも、食育を進めていくことが重要だと考えています。05年に食育基本法が制定されて以来、最近では全国的に食育が積極的に推進されています。しかし、食育といえば、栄養バランスのとれた食事の指導に重点が置かれがちで、味覚や嗜好という観点から食育を行っている現場はまだまだ少ない印象があります。

 私としては、味覚の食育も栄養バランスと同じくらい重要だと考えています。食べるのを楽しむことが一番大事だと思うのです。そのためには味覚を磨くこと、味の経験を積むことが必要。和食を中心とした食育を行い、自然と和食をおいしいと感じられるようになることが大切だと思います。

 一生和食を食べ続けるべきだ、という話ではありません。成長期には体が必要とする、多くのエネルギーが摂れるような食事をした方がいいのは当然のことです。ライフステージに合わせた食事をすればいいのですが、また和食に戻ってこられるようにしてほしい。それには幼い頃からの積み重ねが大切です。アメリカでは、80歳のおばあちゃんがマクドナルドのビッグマックを食べます。アメリカではそれがなじみのある味なのです。

 日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌能力が低いので、欧米型の食事を続けていると、糖尿病などになってしまう恐れがあります。そうした点から見ても、和食を「戻ってこられる味」、つまり味の基本にしておくことが大切です。和食の味覚や風味になじむような食育を行い、自分にとって一番おいしいと感じるものを食べていたら、自然と健康になっていた、というのがベストです。

龍谷大学農学部教授 山崎英恵

週刊新潮 2021年11月18日号掲載

特集「世界に誇る『和食』の根幹 教養としての『だし』」より

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