高市支持者は陰謀論の影響を受けやすい? メディアを悩ますフェイクニュースへの対応策

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重なる高市派とトランプ派

 自民党総裁選は陰謀論者にとって、その存在を誇示する機会だったのかもしれない。終わってみて、そう考えてしまった。理由はこうだ。典型的な陰謀論の一つに、アメリカ大統領選挙は「不正選挙であり、実はトランプ氏が勝利していたのだ」という主張がある。興味深いことに、こうした主張をする人々と高市早苗氏の支持層は一部重なっていた。

《高市派の42%が議会占拠事件時のトランプ派だったことが分かりました.
逆に,トランプ派の30%が高市派でした.さらに,その中から「アメリカ大統領選挙は不正選挙だった」とするツイートをリツイートしたアカウントに限定すると,それらのアカウントの56.6%が高市派であり,高市派の18%が不正選挙ツイートをリツイートしていたことが分かりました》(鳥海不二夫「高市氏を支持するツイートをRTしたアカウントはトランプ元大統領を支持していたのか」)

 いくつかのアカウントを観察した範囲内だが、彼らは総裁選レースで先行していた河野太郎氏を不当に貶めるような攻撃を繰り返し、主張の誤りを指摘されても無視するか、インターネット上で攻撃ネタを発見することにエネルギーを費やしていた。

「増えすぎた人類の数を減らすため」

 陰謀論者の主張が声高に展開されているのは、政治に限った話ではない。私は新型コロナワクチン接種を巡る価値観の違いで、家庭が崩壊したという人々を取材したことがある。新型コロナもワクチンも、「増えすぎた人類の数を減らすためのもの」という主張を真顔で展開する人々が、現実には確かにいる。

 こうした荒唐無稽な主張が一定の影響力を持つ時代にあって、ニュース業界の人々はいかに陰謀論やフェイクニュース、それらに基づくデマに対抗するかを語り合ってきた。

 ここ数年の大きな流れは徹底的なファクトチェックをしよう、科学的で正しいものを伝えよう、あるいはデマを許さないとキャンペーンを張ろうといったものだ。しかし、陰謀論にハマっている人々を取材してきた私は、こうした主張は大切ではあるものの、ややピントを外していると思ってきた。

 詳しくは拙著『ニュースの未来』(光文社新書)に書いたが、フェイクを信じている人はこうした記事に触れたところで、「正しいニュースに触れた」とは思わない。いくら正しい情報を流したところで、問題は解決しないというところに現実的な問題があるのだ。

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