事件現場清掃人は見た 天井近くまで積み上げたDVDの上で孤独死した「40代男性」

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、ゴミ山の上で孤独死した40代男性について聞いた。

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 これまで高江洲氏は、数多くのゴミ屋敷を見てきた。今回ご紹介するのは、その中でも二度とお目にかかれないであろう異様なケースである。

「かれこれ15年前の話です。不動産会社からの依頼でした。東京郊外の2DKのマンションで40代の男性が孤独死したのです。死後1カ月経って発見されたといいます」

 と語るのは、高江洲氏。

「現場に到着し、玄関を開けると、思わず“あー”と叫んでしまいました。なんとゴミが天井近くまで積み重なっていました。これまで数々の悲惨な現場を経験してきた私でさえ、声をあげずにはいられなかったのです。」

ゴミ山の上に敷かれた毛布

 部屋は6畳2間にダイニングだったが、どの部屋もゴミがうず高く積まれていたという。

「ゴミ山のために、トイレのドアは、開け放たれたままでした。トイレにもゴミがいっぱいでした」

 高江洲氏は、仕方がないので、まずゴミの山に登った。

「遺体が発見された場所を探しました。なにしろゴミは天井近くまであるので、ゴミの上を歩くときは身を屈めないと前へ進めません。ほとんど四つん這いになって洞窟の中を這うように進むと、背中が天井にあたりました。閉所恐怖症の人には耐えられない空間です。こんな部屋で、一体どうやって生活をしていたのでしょうか」

 高江洲氏は、ゴミの上に毛布が敷いてあるのを見つけた。

「毛布の周辺が、一番死臭がきつかったので、ここで亡くなったことがわかりました。亡くなった男性は、ゴミ山の上に直に寝ていたのです。蒲団はありませんでした」

 高江洲氏がゴミ山の撤去を始めると、思わぬ事実が判明した。

「ゴミのほとんどが、DVDだったのです。もちろん、普通のゴミもありましたが、何千枚いや、何万枚もありそうでした。それに大量のハードディスクもありましたね」

 2つの部屋の間はゴミが少なく、谷間のようになっていた。

「そこにはスチールラックがあり、パソコンやDVDレコーダー、テレビなどの機器の他に、業務用のDVDコピー機もありました」

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