地域を活性化させる「質的価値」を創造する――野並 晃(日本青年会議所会頭)【佐藤優の頂上対決】

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ローカルを目指した崎陽軒

野並 これらは地域経済を念頭においたものですが、一方では「ベビーファースト運動」というメニューもあります。これは「総活躍社会確立委員会」が掲げる運動の一つで、いま大分県のJCが積極的に取り組んでいます。

佐藤 どんな活動なのですか。

野並 文字通り、赤ちゃんを第一に考えるということで、それを街づくりの観点からやっていこうとしています。例えば託児所の設置や、妊婦、赤ちゃん連れの方に対する優先レジ、優先駐車の推進ですね。また会議に子供を連れてこられる雰囲気を作り出すような働きかけもしています。それによって子供を産み育てやすい社会を実現したい。

佐藤 こうした試みは、大学とうまくジョイントするといいですよ。私はたまたま同志社大学で教え、学長顧問も務めていますが、同志社には日本で唯一「赤ちゃん学研究センター」という研究所があります。赤ちゃんの睡眠や遊び、あるいはロボットがいる環境での反応など、赤ちゃんに関するさまざまな調査研究を行っていますが、そうした組織と組めば、活動はぐんと広がっていくと思いますね。

野並 全国でやろうとは強制していないので、大分県が先行していますが、これはどんどん広がっていけばいいと思っています。

佐藤 このテーマに限らず、大学と組むのは一つの選択肢だと思います。この分野だったら東京大学の生産技術研究所が強いとか、あの問題ならSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)が得意とか、どんなテーマでも必ずどこかに研究している大学があります。JCの中にはその大学の出身者もいるでしょうから、そこを入り口に、助成金を入れてJCを冠にした研究を行ったり、共同調査をしたりすればいい。うまく大学と連携できれば、テーマが深まりますし、成果も出せると思います。

野並 ありがとうございます。参考にさせていただきます。

佐藤 JCとして、コロナ対応で何かの活動や問題提起はされていないのですか。

野並 それは昨年に2度、政府に提言させていただきました。早い段階で家賃補償の問題を取り上げましたし、どうすれば会議などで安全に人が集まれるかを議論して、カンファレンスガイドラインも策定しました。今年はコロナ対策というよりは、コロナ禍でも存続しなければならない地域の課題をどう解決していくか、という方向へ活動をシフトさせました。

佐藤 お話をうかがっていると、野並さんは何にもまして、地域へのまなざしが強く感じられますね。そこにはやはり、全国展開するか悩んでいた崎陽軒をローカルブランドに徹すると決断した尊父の直文社長の影響がありますか。

野並 大いにありますね。いま会頭としてやらせていただいていることの多くには、野並晃の半生と崎陽軒での経営が強く出ています。

佐藤 私は、直文社長に3度お目にかかったことがあります。最初は直文社長が横浜支部長を務めておられる内外情勢調査会の会合でした。そこで意気投合して、2年ほど前にはプレジデント誌で対談したこともあります。シウマイの全国展開をすべきかどうか悩んで、当時、一村一品運動で知られた大分県の平松守彦知事を訪ねて、「真にローカルなものこそインターナショナルになる」という話を聞きローカルブランド化を図った、とおっしゃったのは強く印象に残りました。

野並 存じております。地方への視線もそうですし、ゼロから一を生み出す必要がないということも、シウマイなんですね。曾祖父が横浜の名物を作る際、南京街、いまの中華街で出されていた焼売を見て工夫して作ったことが元にあります。

佐藤 直文社長は「ローカルに行動する」という方針のもと、地域の活動にたいへん熱心で、息子にもJCをしっかりやってもらいたいと、当時からおっしゃっていました。

野並 私は2013年に横浜JCに入会し、2019年には理事長を務めさせていただきましたが、父も祖父も横浜JCで理事長を務めていましたから、3代続けて、ということになります。

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