「すれ違い不倫」で年上女性と33年間交際 還暦男が語る“2人の女性の存在”

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彼女を呼び捨てにはできない

 お互いを思うあまりのすれ違いだったのかもしれない。ひとりになった久美さんの自宅に真幸さんは淡々と通った。

「それからも私の人生に大きく関わったのは久美さんです。会社をやめて独立するとき、妻は大反対でした。まだ子どもたちの学費もかかるし、生活が不安だと泣きながら毎日、訴えられました。だけど『あなたなら大丈夫』と背中を押してくれたのは久美さんだった。彼女は経理職だったので、最初のうち、ボランティアのような給料で私の会社の経理も見てくれていたんです。本当は彼女と一緒に働きたかったけど、それは拒否されました。仕事とプライベートは分けたほうがいい、と」

 独立をきっかけに妻との溝は深まった。確かに最初の数年は苦労したが、それまでは妻に内緒で貯めていた預金から生活費を渡していた。妻が心配するようなことにはならなかったのだ。

「ただ、大事なときに私の味方になってくれなかった妻に対しては、少し気持ちが変わりました。妻は『私と子どもたちのことを考えているの?』とさんざん私を責めましたから、それからは気まずい関係が続きましたね。もちろん、子どもを不安にさせたくなかったから、日常的には平穏に暮らしていたけど。心の部分でね」

 彼はそう言って胸に手を当てた。その部分の欠損は、常に久美さんが埋めてくれていたのだろうか。

「私はいつまでたっても、彼女を『久美さん』と呼んでいるんです。呼び捨てにはできない。それだけ敬意をもっているし、逆に言えばいつまでたってもある程度の距離がある関係なんでしょうね。だからこそうまくやってこられたような気もします。家族という近すぎる関係のほうが苦手なのかもしれません」

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