岸田新総裁の「聞く力」の真価が問われる 自分で決められず何でも相談していた国対委員長時代のエピソード

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禅譲と遠慮の政治

 9月29日に投開票が実施された自民党総裁選で、岸田文雄前政調会長(64)が新たに第27代総裁に選ばれた。岸田氏は10月4日召集の臨時国会で首班指名を経て、第100代首相として新内閣を発足させる見通しだ。岸田氏自身、売り文句の一つに「聞く力」を挙げ、それが今回の総裁選勝利の一因ともされたが、「話を聞きすぎ」、「誰の話でも聞いてしまう」きらいがあることがネックだと指摘されている。

 かねて岸田氏は名門・宏池会のボスとはいえ党内第5派閥に甘んじる立場として、あくまでも安倍政権を支え、禅譲を狙う作戦を採ってきた。

 2017年に長く務めた外相を離れる際に「党務への思い」を安倍首相に伝え、幹事長就任を望んだが、首相は二階幹事長を切ることができなかった。それは19年秋にも繰り返されたし、その年の夏には県議だった河井杏里氏の擁立が二階幹事長のゴリ押しで決まり、宏池会所属候補が落選の憂き目にあった。ケンカができず禅譲は待てど暮らせどやってこず、20年の安倍氏の電撃辞任の際にもお鉢は回って来なかった。

「岸田は話しがつまらない」「岸田は終わった」

 岸田氏は20年の総裁選での敗北を振り返って、ホームページにこう綴っている。少し長くなるが紹介しておきたい。

《昨年の総裁選で、私は敗北いたしました。力不足でした。何よりも、私自身、総理になることへの「確信」がありませんでした。しかし、今回は違います。「今の時代が求めるリーダーは私である」そうした「確信」があります。総裁選に破れ、多くの方が、自分から去って行ったように感じました。「岸田は話しがつまらない」「岸田は終わった」そんな声が聞こえてきました》

《ある時、地元の商店街を歩いていると、年配の女性に声をかけられ、お話を伺いました。春風薫る、穏やかな日でした。暫くお話を伺い、話を切り上げようとしたその時、こう言われました。「政治家の先生に、こんなに、ゆっくり話を聞いてもらえたんは、初めてじゃけん。皆な自分のことは言うけど、話は聞いてくれんけん。やっぱ岸田さんじゃわ。」ハッとしました。政治家として、厳しい批判にさらされる私にも、「聞く力」という特技がある》

 岸田氏にとって「聞く力」が売りになり、それを集めた「岸田ノート」を出馬会見で掲げて見せたのだった。

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