岸田新総裁の「聞く力」の真価が問われる 自分で決められず何でも相談していた国対委員長時代のエピソード

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安倍前首相に救われた

 政治部デスクは、

「今回の岸田さんがこれまでと違ったのは、戦う姿勢を見せたことです。その最たる例が自民党役員の在職期限に触れたこと。二階幹事長にケンカを売ったわけです。それどころか、菅首相までが総裁選不出馬に追い込まれるほど、パンチがあって国民受けするやり方でした」

 と振り返り、こう続ける。

「そういったこれまでとは別人のようなスタンスや具体的な政策提案が並ぶ中で、力のある軍師がついたのではないかと指摘する声があがりました。実際、安倍さんの懐刀で秘書官や補佐官などを務めた今井尚哉内閣官房参与が、岸田さんの知恵袋となっていることがわかりました」

 加えて、

「岸田さん自身が言うように、去年の総裁選で惨敗した際に『終わった』と言う声は少なくありませんでした。今回も菅首相が出馬せず、河野太郎行政改革担当相が出馬することになった時点で勝ち目はないのではと目されていましたが、そこは安倍さんに救われましたね」

 河野氏は小泉進次郎環境相とタッグを組み、党内の重鎮や長老を「抵抗勢力」と見立て、自民党の再生を演出しようとした。それが安倍氏の癪に障ったのだ。具体的に、安倍氏は高市早苗前総務相を担ぎ出す。

キングメーカーの言うことを

 デスクが続ける。

「確かに河野・小泉、そしてその後に陣営に取り込んだ石破茂元幹事長らの国民的人気は高いようですが、永田町では友達がいない。党員票がばらけて決選投票にもつれ込めば逆転を狙えるという見立てが安倍さんにあったのでしょう。そこは2012年以降、選挙に連戦連勝した政局感のなせるわざとしか言いようがないですね」

 今回の総裁選で驚きをもって迎えられたのが、1回目に岸田氏がトップになったことと高市氏の善戦だ。

「結局、それを実現させたのは安倍さんと麻生太郎財務相であって、岸田さんはしばらくの間、彼らの声に耳を傾けざるを得ないでしょう。聞く力と岸田さんが訴えた対象は安倍・麻生ではなかったはずなのですが、弱小派閥のボスとしては、キングメーカーの言うことを聞かないわけにはいかないでしょう」(同)

 安倍・麻生傀儡(かいらい)政権と呼ばれることは避けられないだろう。

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