忘れられない不倫相手は年下男子 思わぬ再会の衝撃と妻の誤解にアラフォー男性は――

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そして妻にばれ…

 そしてその頃、「恭ちゃん、ごめん」と裕香さんがスマホを差し出した。夫とケンさんのLINEのやりとりのスクリーンショットである。

「ケンのことはKと登録していたので、妻は相手が女性だと思っていたみたいです。『恭ちゃんが本気でその彼女のことが好きで離婚したいなら、いいよ、離婚するよ』という裕香の言葉に、僕は崩れるようにして号泣してしまいました。『違うんだよ』とは言ったけど、説明することはできなかった」

 妻と娘に申し訳ない気持ちを抱え、ひとまず家庭生活は続くことになった。だが、彼の頭の中はケンさんのことでいっぱいだった。

「でも次に会ったとき、ケンに言われたんです。『恭一さんは、やっぱり元いた世界に帰ったほうがいいよ』と。僕はもう戻れない。ケンを知ってしまったからには戻れない。そう言っているうちに涙が出てきて。『僕があんなふうに他の男としているところを見ても、僕のことが好きなの?』とケンに聞かれました。もちろん、愛情はさらに強くなっていた。ケンなしでは生きていけない。そう言ったら、ケンは泣き笑いしながら『僕、それほど真剣じゃなかったのに。ごめんね』って。どこまで本当かわかりません。ショックのあまり僕はケンの頬を打ってしまった」

 ケンさんとの別れだった。衝撃が大きくて、彼は会社を休んで3日ほど寝込んだ。それが1年半ほど前のことだ。

「裕香にはちゃんと言わなければと思いながら、まずは仕事をしなければと復帰しました。それからあれよあれよという間にコロナ禍に入り、妻も僕も在宅で働くことが増えていって。ケンはどうしているんだろうと思うと身がよじれるほどつらいけど、日常生活で家族がコロナにかからないようにと話し合うことも多くなって、今に至ります。裕香は僕の浮気がコロナでおさまったと思っているんじゃないでしょうか」

 ケンさんの最後の泣き笑いのような表情を思い出すにつけ、「あれはケンの本心ではない」と思うそうだ。とはいえ、あんな顔でごめんねと言われたら、もう追い回すことはできないのもわかっている。目の前の家族を大事にしなければと思いながら、彼は時折、ケンさんの体臭と香水が混ざり合った淡い香りがふっと鼻先に漂うのを感じては、自分の心の中にしっかり根付いてしまった彼に思いを馳せている。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月8日掲載

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