ダブル不倫がバレて四者会談の修羅場… そして続く“あり得ない日常”への恐怖

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四者会議の末…

 だがそんな関係は1年もたたずに奈津子さんにバレた。優大さんが外泊したからだ。奈津子さんは自ら夫を尾行して、ふたりがホテルに入る写真も撮っていた。さらに優大さんの携帯電話から相手を特定し、玲香さんの夫にも連絡をした。ふたりとも、それぞれの配偶者に「もう会わない」と約束した。実際、ほとぼりが冷めるまで会わずにおこうと決めたが、1ヶ月後にはふたりでホテルにいた。

「玲香に会わないと苦しくてたまらない。息が浅くなってしまうんです。彼女もそうだと。ふたりで一緒にいるにはどうしたらいいか。そこで僕、ワンルームマンションを借りたんです。会社とも自宅とも無関係の住宅街に。どのくらいの頻度で会えるかわからなかったけど、とにかくふたりだけになれる場所がほしい。ホテルじゃ虚しい。そんな気持ちでした」

 しかし、ふたりがまた会っていることがそれぞれの配偶者にばれてしまい、奈津子さんは「四者会議」を提案した。場所は玲香さんの家だ。夏休みで、子どもたちは玲香さんの実家へ行っていて留守だった。

「夫婦で、僕の不倫相手の自宅に行く。ヘンな感じでした。妻は手土産まで用意して……。玲香の自宅は広々としたマンションでした。どういう挨拶をしていいのか誰もわからず、もごもごしながらリビングに4人が集いました」

 どうやって口火を切ったらいいかわからない状態で、玲香さんの夫が「どうします?」と突然言った。

「別れてもらうしかないでしょ、と言ったのは僕の妻。そうですよねと玲香の夫。玲香は僕をちらちら見ていましたが、『ごめんなさい。別れられません。離婚もしません』といきなり宣言しました。玲香の夫は、泣きそうになりながら苦笑いして……。みんなが僕の顔を見るので、『僕も別れられない。家庭は今まで通り守ります』と正直な気持ちを打ち明けました。奈津子は『バカじゃないの、そんなこと通用するはずないでしょ』と。すると玲香の夫が『別れる方向で考えてもらわないと……』と遠慮がちに言うんです。どうやら玲香夫婦は、夫の立場が弱いんだなとわかりました。あとから聞いたら、玲香の夫は妻にぞっこんらしいです。離婚だけはしたくないというのが彼の主張でした」

 何の結論も出ないまま、夫婦は玲香さんの自宅を辞した。帰宅すると、奈津子さんは優大さんの母の部屋に入って出てこない。ふたりは優大さんの件で距離が近くなったようだ。

「あれから2年、今は月に2回ほど週末はマンションで玲香と過ごしています。最初は帰宅すると妻に睨まれ、母に罵倒されたこともありましたが、続けていたら今はふたりとも何も言わなくなった。玲香も何も言われないそうです。僕たちが月に2回以上、マンションに泊まることはありません。どちらかに用があれば延期するし。どちらとも別れないとふたりして宣言した以上、玲香と僕は会っていない時間はきちんと家庭で役割を果たそうと決めたんです。それを奈津子にわかってほしいとは思ってないけど、月2回、家に帰らない僕に何も言ってこないのはありがたいような、ちょっと怖いような……」

 不思議ななりゆきである。夫が月に2回、金曜の夜から日曜の夜もしくは月曜の夜まで帰ってこないのを、妻は黙認するようになっているのだ。子どもたちには父親が定期的に出張していることにしているという。今騒ぐと、家庭内に悪影響を及ぼすから、妻は黙っているのだろうか。

「たまに『あなたはろくな死に方しないわね』と言われたりするので、妻が僕を許しているわけではないと思います。ただ、子どもたちの将来を考えても、ここで騒ぐ意味はないと思っているんでしょう。母もときどき『いいかげんにしなさいよ』とは言うけど、それ以上は言わない。今の状態が膠着状態なのか、あるいは日常生活の一部として受け入れられているのかわかりません。もちろん身勝手だとわかってはいますよ。いつか莫大な慰謝料を請求されるかもしれない。それでもいいんです。今、僕と玲香は一緒にいる時間を宝物のように感じています」

“もうひとつの疑似家庭”を作ってしまうと、不倫の恋は案外早く冷めるものだ。家庭はふたついらない。不倫に求めるのは刺激であることが多いからだ。だが優大さんの場合、玲香さんに求めたのは一緒にいて安らげる空間だったのかもしれない。だから疑似家庭が機能してしまっている。いつまで続くかわからない“非日常を含めた日常”が、明日も続いていく。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月11日掲載

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