金が至上命令の「侍ジャパン」 アマ球界も五輪“野球復活”に熱心だった日本の特殊事情

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一度も頂点にたどり着いていない

 東京五輪で金メダルを“至上命令”とされる競技の一つが、3大会ぶりに正式種目に復活した野球だ。

「このメンバーなら金メダルを獲得できるというメンバーをみんなで考えました」

 6月16日、野球日本代表「侍ジャパン」で東京五輪に臨む24選手を発表した稲葉篤紀監督はそう話した。菅野智之、中川皓太(ともに巨人)、會澤翼(広島)はコンディション不良で辞退したものの、千賀滉大(ソフトバンク)、伊藤大海(日本ハム)、梅野隆太郎(阪神)を代わりに選出。世界最高峰のメジャーリーグ(MLB)が各球団でベンチ入りする26人の派遣を見送る一方、日本のプロ野球(NPB)からフルメンバーを招集した侍ジャパンは金メダル候補筆頭と言える。

 野球は1992年バルセロナ大会から2008年北京大会まで正式競技として実施され、毎回出場してきた日本は一度も頂点にたどり着いていない。2017年に就任した稲葉監督は侍ジャパンにとって東京五輪を「集大成」と位置づけ、十分な年数をかけて選考を行ってきた。

 野球日本代表は1996年アトランタ大会までアマチュア選手が出場していたが、2000年シドニー大会でプロの出場を解禁、松坂大輔(西武)や黒木知宏(当時ロッテ)、松中信彦(当時ソフトバンク)ら8人のプロと16人のアマチュアで混成チームを結成した。続く2004年アテネ大会以降、全メンバーをNPB所属選手で編成している。

飛車角どころか金銀まで

 今回の東京五輪にもオールプロで挑むなか、じつはこうした選考に異を唱える者も少なくない。

「プロ野球はオリンピックをアマチュアに返すべきですよ。プロがWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、アマがオリンピックに出場すればいいじゃないですか」

 社会人野球の元監督がそう主張していたことがある。アマチュア選手にとって長らくオリンピックこそ最高の舞台と位置づけられ、そこに立つことが最大の栄誉とされてきたからだ。同意見を述べるアマチュアの監督やコーチは決して珍しくない。

「オリンピックはアマが出場したほうがいいと思います。プロ野球選手会にもそういう議題を上げるつもりです」

 侍ジャパンの一員としてWBCに出場した、あるプロ選手もそう話していた。WBCは回を重ねるにつれ大物メジャーリーガーの参加人数が増えている。一方、オリンピックは日本と韓国、キューバなどを除き、主要各国とも飛車角どころか金銀まで落としたようなメンバーだ。そうしたオリンピックの舞台にアマチュアが出場したいと望むなら、プロが身を引いても構わないと考える心情自体は理解できる。

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