金与正の執念で粛清された北朝鮮軍のツートップ 新設ポストで読む正恩の“健康状態”

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与正復活!?

 朝日や読売といった全国紙は結局、最後の最後まで扱いは小さかった。北朝鮮軍のNo.1とNo.2の「元帥解任」を筆頭に、大幹部が多数“解任”されるという「粛清クーデター」が起きたというのに、だ。

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 まずは半島情勢を取材する記者が説明する。

「粛清された軍ナンバー1は、李炳鉄(リ・ビョンチョル)です。1948年生まれと言われており、今年の誕生日が来れば73歳になります。朝鮮人民軍空軍司令官を務め、核ミサイル開発の功労者です。2016年に行われた中距離弾道ミサイル『ムスダン』の発射実験に立ち会いました」

 打ち上げが成功すると、金正恩(キム・ジョンウン)と抱きあって喜ぶ姿が公開された。北朝鮮の核開発を主導した責任者とされていた。正恩の側近中の側近と言われ、つい先日までは軍人としての枠を超え、朝鮮労働党、つまり北朝鮮という国家における最高首脳の1人だった。

 ナンバー2は、朴正天(パク・チョンチョン)。生年月日も出身地も不明だという。

「昨年10月、朝鮮労働党は李炳鉄と朴正天に『軍元帥』の称号を与えたと発表しました。読売新聞は『元帥は最高指導者以外では過去に5人しかいない軍の最高階級』(末尾:註1)と報じました。ちなみに当時の肩書は、李が党副委員長、朴が軍総参謀長となっていました」(同・記者)

写真の衝撃

 北朝鮮という国家の中で昇りつめた「元帥」2人が、あっさりと“解任”されてしまった。そのやり方も、いかにも北朝鮮っぽい。

「北朝鮮の朝鮮労働党政治局は6月29日、党主要幹部を集めた政治局拡大会議を招集しました。同国の国営メディアによると、この場で金正恩は、新型コロナウィルスの感染対策で『国家と住民の安全に危機をもたらす重大事件が発生した』と指摘。幹部を激しく叱責し『召喚(解任)』したというのです。『北朝鮮でもやはりコロナ感染が拡大したのか』というのが、特に日本のメディアにおける最初の受け止めだったと思います」(同・記者)

 この会議を伝えた朝鮮中央テレビの映像に、文字通り世界が注目した。人事の採決が行われたと思われる場面で、他の幹部が挙手して賛意を示す中、李と朴の2人だけが手を挙げていなかったのだ。会議途中で姿を消した幹部の席も写だされた。このことから、解任・粛清劇を国民に見せる意図的な放映だったことが分かる。

「映像に音声はなく、ナレーションなどの解説もついていませんでした。しかし、同国の労働新聞も30日、周囲の幹部が挙手する中、視線を落として腕を低くしている李の写真を掲載しました。同紙は書記や政治局常務委員、政治局員、政府幹部の多数『解任』も報じていますから“大粛清”は明らかだと言わざるを得ません。金ファミリーと軍部は持ちつ持たれつの関係です。にもかかわらず、正恩が軍のナンバー1とナンバー2を解任したことが分かったわけです。ところが日本の全国紙は紙面で真相に迫ることができませんでした」(同・記者)

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