金与正の執念で粛清された北朝鮮軍のツートップ 新設ポストで読む正恩の“健康状態”

国際 韓国・北朝鮮 2021年7月13日掲載

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集合写真の衝撃

 記事では《失脚していないことは確かなようだ》と解説し、復帰の可能性もあるとした。一方、今回解任された李は、正恩を含む《党最高指導部》の5人に明記されていた。

 今から思えば、李・朴と与正の間で、熾烈な“権力闘争”が行われていたことが推察される人事だったことが分かる。

「与正は今回の拡大会議で演説を行いました。彼女は降格された中央委員でしかないですから、本来なら身分不相応な行為と言えます。極端な比喩を使えば、課長が役員会で演説するようなものです。その分、与正復活を世界に印象づけるには、まさに格好の舞台だったということでしょう。元の政治局員候補に返り咲いたかもしれません。日米への外交を担当するとの観測や、秘密警察の国家保衛省も握ったとの情報もあります」(同・重村教授)

 7月8日は金日成(キム・イルソン[1912~1994])の命日であり、孫にあたる金正恩は遺体が安置されている錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を参拝した。この時に集合写真が撮影されたが、その“序列”も大きな注目を集めた。

「まず与正は『政治局員候補』以上の場所に立っており、改めて“復権”を印象付けました。これに対して李は『政治局員候補』以下の立ち位置でしたので、4段降格の人事が行われたと分かりました。なぜか朴は高位の場所でしたが、「元帥」の位置ではありませんでした。更に軍服を着ていなかったので、やはり解任・粛清が行われたことは間違いないようです」(同・重村教授)

「党第一書記」新設の意味

 粛清した李と朴を、わざわざ集合写真に映した。このことからも、様々なことが浮かび上がるという。

「政治局拡大会議の後、李と朴が解任されたという噂は平壌中に広まりました。幹部層や軍部が相当に動揺した可能性があり、2人が写真に映ったのは沈静化を図ったのかもしれません。また、2人を完全に“放逐”することは、まだまだ難しいのかもしれません。後者の場合だと、軍部の力はまだまだ強大で、与正一派との確執が続くということも考えられます」(同・重村教授)

 一方、正恩の健康状態は依然として不安定なようだ。北朝鮮メディアは異例の別人のような「おやつれ報道」を展開し、日本の主要メディアも熱心に伝えたことは記憶に新しい。

「今回の拡大会議前に、我々専門家の大きな注目を集める労働党規約改正が明らかになりました。それは『党第一書記』というポストが新設されたことです。簡単に説明しますと、正恩が倒れたり、もしくは死亡したりした際、後継者が決まるまでの間、代理を務める役職なのです。背景には昨年の与正対朴・李の対立事件への反省があります」(同・重村教授)

 反省とは、正恩の健康状態が不透明だった期間、与正が兄の代理を務めようとして失敗したことだ。

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