金与正の執念で粛清された北朝鮮軍のツートップ 新設ポストで読む正恩の“健康状態”

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金ファミリー後継を否定!?

「今回、代理の権限を公式に設定したということでしょう。与正派の番頭とされる秘書室長の金昌善(キム・チャンソン)の復活を密かに映像で流した事実が、それを物語ります。彼は米朝首脳会談の立役者の一人でした」(同・重村教授)

 正恩に対する「おやつれ報道」が行われた中、代理の権限が回復した。今後も彼の健康状態に関心が集まるのは必定だろう。

 実は、今年1月に行われた朝鮮労働党の党大会でも、同じように関係者が驚いた“改革”が発表されている。新しい党規約から、金日成(キム・イルソン[1912~1994])、金正日(キム・ジョンイル[1942~2011])の名前が削除されたのだ。

「これまでの規約には金日成、金正日の個人名が賛美する文脈で使われていたのですが、今回の党規約改正では、『朝鮮労働党』と『金日成主義』『金正日主義』に完全に置き換わりました。これが何を意味するのかといえば、金ファミリーの正統な血統だけが北朝鮮という国家を個人支配するという規定を消し、労働党による組織支配に変更したことになるのです」」(同・重村教授)

 金一族は独裁政治を反省し、民主的な国家に大きく方向転換したのか──と思ってしまうが、もちろんそんなことはないという。

クーデタの可能性

「要するに金日成と金正日の“隠し子”でも後継者になれるよう、党規約を書き換えたのだと、平壌の事情通は解説しています。2人の“非嫡出子”は30人を超えるとも言われており、労働党の主要なポストなどで厚遇を受けています。後継者の資格を直系血族に限ると、『指導者の正当性問題が解消しない』というのです。正恩の誕生日は今なお公式に明かされていません。この事実が疑念を生んでいるようです」(同・重村教授)

 だが、これは大きなリスクを孕んでいるという。

「言うまでもなく、直系でない隠し子を擁立することも可能です。純潔血統が指導者の条件でなくなったのですから、クーデターさえ可能になります。新指導者は『金日成主義』と『金正日主義』を体得した人物と言えばいいのです。金ファミリーの一部や、軍と党の幹部が『この人は隠し子でも優秀です』と担ぎ出し、党と国家を支配しようとしても不思議ではないのです」(同・重村教授)

 重村教授によると、日本における「女系天皇・女性天皇」の問題と似たところがあるという。

「いずれにしても、北朝鮮で権力闘争は日常茶飯事です。正恩の健康問題が長引けば、これからも、今回のような粛清や勢力争いが続いていくのでしょう」(同・重村教授)

註1:「北が幹部2人に『軍元帥』を授与 核・ミサイル開発主導」(読売新聞:20年10月7日)

デイリー新潮取材班

2021年7月13日掲載

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