ノーベル賞研究から生まれた抗老化サプリ「ウロリチン」 オートファジーの活性化がカギ

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「加齢臭が…」

「日本初」を掲げるウロリチンカプセルの販売元である「協和」はこう説明する。

「オートファジーとサーチュイン、両方の活性化効果があるということで、シミが薄くなったり、シワが減ったりといった効果に着目し、この度、ウロリチンを原材料としたサプリを開発いたしました」

 同社にウロリチン(製品名「ウロリッチ」)を供給するダイセル社が続ける。

「ウロリチンを化学的に合成する方法はいくつかありますが、弊社は独自で発見したウロリチンの腸内細菌を使った発酵製造に成功しており、これは世界初の製法です」

 再び吉森氏が説く。

「アンチエイジングを謳(うた)った商品はたくさんありますが、紫外線などの個々の老化促進要因に対抗するという点において、ほとんどが対症療法と言えます。しかし、いくら『外』からの刺激の影響を除こうとしても、『中』の細胞の機能が低下したままであれば焼け石に水になってしまう。細胞自身の機能低下を防ぐほうが根本的なアンチエイジングにつながるのではないか、というのが我々のアプローチです」

 こうして新たに登場した「第三の国産抗老化サプリ」。ここで、改めて前回紹介した「第一」と「第二」について振り返っておく。まずはNMN。

 NMN、正式名称「ニコチンアミド・モノヌクレオチド」は、体内だけでなく、ブロッコリーや枝豆などの食品にも含まれているが、ごく微量なのでそれらから効果を得られるほどのNMNを摂取するのは難しい。

 NMN研究の第一人者で、老化研究の世界的権威である米ワシントン大学教授の今井眞一郎氏が説明する。

「NMNを摂取すると、体内でNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)と呼ばれる物質に変わります。あらゆる生物はこのNADを、各臓器がエネルギーを使う時に必要な通貨のようなものとして利用しています。とりわけ、SIRT1は、NADを使うことで全身のさまざまな機能を回復させることが分かっています」

 すでにマウス実験では非常に大きな抗老化作用があることが判明していたNMN。そこで今井氏らのグループは、閉経後の55~75歳の女性で糖尿病になる確率が高い予備軍の被験者にNMNを経口投与する臨床治験を実施し、その結果を今年4月に発表した。

 13人がNMNを、12人が偽薬を10週間にわたって飲んだ結果、前者のグループでは、骨格筋でインスリンの働きが25%上がっていることが分かり、糖尿病リスクの軽減につながる効果が見られたのだ。

 こうして、ヒトにおいても抗老化作用が期待されているNMN。日本でも膨大な数の「NMNサプリ」が販売されているが、どうやら玉石混淆のようで大いに注意が必要だ。

 今井氏が「選び方」のポイントを続ける。

「私も理事のひとりになっているIRPA(プロダクティブ・エイジング研究機構)という研究機関で4社のNMN製品を調べたところ、いずれも純度は97~99%台でしたが、不純物の含有という点では、そのうちのひとつの製品には7種類もの不純物が入っており、しかも生体内には存在していないと考えられる物質が入っていました。一般の消費者には、一見、純度は高く見えても、何が入っているか分からないわけです」

 ならば、我々はどう見分ければいいのか。

「現在、世に出ているNMN製品で、動物とヒトで安全と効能が確認されているのは二つの会社のものだけです。いずれも日本製です」(同)

 その2社のうち1社は研究用試薬が主だ。そして、もう1社のものがミライラボバイオサイエンス社の製品である。同社の商品は低価格帯のものでも60粒入りで6万4800円となっているが、その愛用者からは個人的な体験談として、

「去年の10月から飲み始めましたが、頬にあったシミが薄くなり、妻からは加齢臭が消えたと言われました」(65歳の男性)

 などといった声が……。

NADと生体リズム

 そしてもうひとつの若返り物質が「5-ALA」だ。天然アミノ酸の一種である5-ALAは体内で作られるだけでなく、納豆などの発酵食品にも含まれている。

 東京大学名誉教授で長崎大学大学院教授の北潔氏が率いる研究チームは、昨年10月、5-ALAが新型コロナウイルスの増殖を抑制する効果がある可能性を発表しているが、それ以前から抗老化の機能が注目されていた。

「体内の5-ALAは17歳の時にピークを迎え、それ以降は減る一方となります」(北氏)

 その5-ALAは、生命のさまざまな活動のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)の体内での生成に大きく関係し、5-ALA生産・販売のパイオニア企業であるネオファーマジャパン社のチーフサイエンティストで高知大学客員教授の田中徹氏曰く、

「生命のエネルギー源であるATPの生成能力の低下が、老化につながっていると考えられます」

 このATPの「元」とでも言うべき5-ALA関連の販売会社で働く47歳の女性スタッフも個人的な感想として、

「5-ALAを飲み始めて5年経ちますが、半年くらいして気が付いたら、冬にひどかったあかぎれができなくなり、アトピーも軽くなりました」

 と、体験談を語る。

 無論、病は気からというように、NMNも含め服用しているのだから効くに違いないという「心の持ちよう」による効果も計り知れないが、日々、鏡を見て自らの姿に溜め息をついている人は、今後、これらのサプリの評判に気を揉むことが増えそうだ。

 とはいえ、複雑極まりない構造を持つ人体の若さを、「サプリのみ」で保てると考えるのは早計だろう。むしろ、サプリの服用だけという「楽」な手段で老いを防ごうという甘い考え方そのものが、努力や挑戦の意志を欠き、すでに「精神が老いている」状態と言えなくもない。やはりサプリ頼みではない自助努力も求められるところであろう。

 事実、NMN研究の第一人者である先の今井氏もこう言う。

「日本では、米国によくいる極度の肥満体型という方はほとんどいません。にも拘(かかわ)らず、なぜこんなにも糖尿病患者が多いのか。私は、日本人の生活様式が関係している可能性が高いと考えています。夜遅くに帰ってきて、ご飯を食べて寝るという生活は生体リズムに合っていません。そしてNADの生成は自然の生体リズムに連関しています。また、夜遅くまでスマホやパソコンを見ていると、ブルーライトの影響で眠りも浅くなる。現代の日本人の生活は、生体リズムにとってありとあらゆる悪いことをしている状態なのです」

週刊新潮 2021年7月1日号掲載

特集「『若さ』の探求第2弾 今すぐ買える国産 新『抗老化サプリ』登場 ノーベル賞研究から派生『若返り』第三の“妙薬”『ウロリチン』」より

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