菅首相に粘着する文在寅 ”蚊帳の中”にもぐりこみたい韓国、「左派政権駆除」に動く日米

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2021年6月21日掲載

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青瓦台は「日本も努力」

――日韓が揉めている時に、韓国紙が自分の国の政府を批判することがあるのですね。

鈴置:極めて珍しいことです。中央日報の論説委員会は「こんな下手な対日外交を続けている限り、永遠に蚊帳の外に追いやられたままだ」と焦ったと思われます。こう続くからです。

・G7での韓日首脳会談不発を巡る感情対立は7月東京五輪を契機に進められていることが分かった文大統領の訪日にも否定的な影響を及ぼしかねない。
・韓日間には経済分野だけでなく、北核解決や中国台頭への対応など、互いに手を取って解決しなければならない課題が山積している。

 興味深いのは、この事件に対する青瓦台の対応でした。聯合ニュースの「韓日関係発展へ引き続き努力 韓国大統領府高官」(6月16日、日本語版)から、スポークスマンである朴洙賢(パク・スヒョン)国民疎通首席秘書官の発言を拾います。

・青瓦台があれこれ言うのは両国関係の発展のため適切ではない。両国が会談のため多くの努力をした。

 極めて融和的な姿勢です。外交部が非難した日本政府を、青瓦台は貶めず「努力した」とまで持ち上げた。外交部はともかく、青瓦台は本気で日韓首脳会談を開きたいと考えているのです。中央日報が指摘したように、日本を怒らせれば首脳会談はますます難しくなります。

――外交部と青瓦台の姿勢が大きく異なるのはなぜでしょうか?

鈴置:次期政権下で文在寅氏らは刑務所送りになるかもしれません。一方、外交官はよほど政権ベッタリでない限り、司直の手は及びません。日韓首脳会談の実現にかける必死さが異なるのです。

 それに外交官の多くは左派政権の反米路線に危機感を抱いています。この政権が外交的に失敗し来春、親米政権に戻るのは悪い話ではない。もちろん、表立ってそんな本音は語れないでしょうが。

「約束違反」と言えば「見下すな」

――それにしても、騒々しい外交をする国です……。

鈴置:韓国が平気で約束を破るからです。外交は手練手管とは言ってもあれほど簡単に約束を破れば、誰からも――日米だけではなく北朝鮮からも相手にされなくなります。その結果、「会って欲しい」と金正恩総書記や菅義偉首相の後を付けて回わる羽目に陥る。

 問題は「平気で約束を破る」のが文在寅政権に限らないことです。きちんと守ったのは朴正煕(パク・チョンヒ)政権ぐらいで、あとは自分の都合が悪くなると掌を返した。

 国民も合意違反を問題にしない。「この約束は我々の正義に反するから破って当然」と堂々と主張する新聞記事をしばしば見かけます。最近、韓国で開発された新理論は「約束を破ったと非難するのは、日本が韓国を見下しているからだ」という主張です。

 ハンギョレ新聞の「日本は『感情に流される国』になりたいのか」(6月16日、日本語版)がそれです。筆者は東京特派員を経験したキル・ユンヒョン記者。日本でも話題になった記事なので、読んだ人もいるかもしれません。前文を引用します。

・韓国を扱う日本メディアの態度には、常に「上から目線」があると痛感する。「上から目線」とは、道徳性と実力で優位な立場に立つ者が自分より劣った者に教えようとするような態度を意味する。
・「韓国は常に感情に流される国」「自分がした約束を守らない国」「支持率回復のために反日感情に依存する国」といった報道をあふれさせ、それからしばらく経てば、今度は外交的努力を通じて両国はそろそろ関係を回復すべきだとする社説での口出しが相次ぐ。

韓国人にはシカト作戦が一番

――「上から目線」ですか……。

鈴置:キル・ユンヒョン記者は「首脳会談に応ぜよ」と日本に訴えるつもりでこの記事を書いたようです。でも、菅義偉首相が読んだら、逆に「シカト作戦を続けよう」と決意を固めると思います。

 合意を簡単に破るうえ、約束違反を指摘すれば「優越感を持って俺を見ているだろう」と怒鳴り込んでくる――。そんな人々の国とは、話し合うほどに関係が悪化してしまうのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮取材班編集

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