菅首相に粘着する文在寅 ”蚊帳の中”にもぐりこみたい韓国、「左派政権駆除」に動く日米

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「ブラック・スワン」が怖い

――「金正恩訪日」なんてあり得ますか?

鈴置:北朝鮮は東京五輪に参加しないとIOC(国際オリンピック委員会)に通告済みです。参加に転じたうえ、金正恩総書記がわざわざ訪日する可能性は限りなく低い。

 しかし、文在寅政権にとってそれは「ブラック・スワン」――起こる可能性は低いものの、もし起きたら大惨事――なのです。

 案件の性格上、大声では表明しませんが菅義偉首相は拉致問題の解決に意欲的です。首相に就任するや真っ先に訪問したのは、北朝鮮と関係の深いベトナムとインドネシア。両国を通じ、金正恩総書記に拉致問題の解決を呼びかけたと見られています。

 これに対し北朝鮮もメディアを通じ、日本との関係改善を匂わすサインを送ってきた(「韓国は『アグレマン』前に駐日大使を発表した 『北朝鮮一点買い』で延命図る文在寅」参照)。

 日本が北朝鮮と関係を改善する時は、もちろん米国と歩調を合わせます。ただ、妨害に動くであろう韓国には黙って進めるのが常道です。

 朝鮮半島の地殻変動をもたらす外交交渉に韓国が主要プレーヤーとして参加できなければ、文在寅政権は「ノーベル賞がもらえない」どころではありません。「国民に大恥をかかせた売国奴政権」と認定され、監獄行きの可能性がさらに増します。

 日本を罵倒し続けてきた文在寅政権が昨年11月、突然に態度を変え、菅政権にすり寄り始めたのも、外交戦に首を突っ込むためです。まずは北朝鮮との秘密交渉を担当する国家情報院の朴智元(パク・チウォン)院長を日本に送りました。

 朴智元院長は菅義偉首相に「東京五輪の際に、日米南北の首脳が集まって拉致、非核化などの懸案を協議しようと提案した」と韓国紙は報じています(「蚊帳の外から文在寅が菅首相に揉み手 バイデン登場で“不実外交”のツケを払うはめに」参照)。

 文在寅大統領は「菅ごときに頭を下げるのは屈辱」と大いに不満でしょうが蚊帳の外にいる以上、何としてもその中に入り込んで、自分も外交ゲームに参加しているフリをせねばなりません。

首相にも外相にも会えぬ駐日大使

――東京五輪が終わったら、菅首相への粘着も止む?

鈴置:文在寅大統領のストーカーは五輪後も続くと思います。金正恩総書記が訪日しなくとも、菅義偉首相が訪朝して日朝関係が一気に進展する可能性があるからです。

 2022年2月の北京五輪が日朝、あるいは米国や中国も加えた多国間の首脳会議の場になるかもしれません。その頃になれば新型コロナの流行も下火になり、北朝鮮も外交に動く余裕が出るでしょう。

 北朝鮮の食糧事情は悪化の一途をたどっていて、日本との関係改善が日増しに重要になっています。文在寅政権からすれば、いつ「寝耳に水」の日朝交渉が始まるか、不安でしかたがない。せめて、その匂いでも嗅ぎたいのだと思われます。

 情報収集は大使の仕事ですが、今年初めに日本に送った姜昌一(カン・チャンイル)大使は天皇侮蔑発言が災いして、首相はもちろん茂木敏充外相にも会ってもらえない。

 日本政府がアグレマンを出す前に、韓国政府が大使交代を発表したことへの対抗措置でもあるのでしょうが(「韓国は『アグレマン』前に駐日大使を発表した 『北朝鮮一点買い』で延命図る文在寅」参照)。

北朝鮮も「文在寅を相手にせず」

 ここは大統領自らが菅義偉首相と会って、日本から情報を取りたいところです。2002年9月の小泉純一郎首相の訪朝に関しては韓国側も事前に情報を得ていた。当時の金大中政権は北朝鮮との関係が良好だったため、日朝交渉の細部に至るまで北が教えてくれていた。

 ところが今、文在寅政権は北朝鮮からまったく相手にされていません。金正恩総書記に会ってもらえませんし、情報をもらえるどころか、韓国がカネを出して建設した開城の南北共同連絡事務所まで爆破されてしまいました。

 北朝鮮は南北首脳会談の開催の見返りに韓国からカネをもらってきた。ところが金正恩総書記は2018年に3回度も開いたのに米国の監視が厳しく、韓国からの見返りが思い通りには来なかった。

 それ以降、金正恩政権は「文在寅政権は相手にしない」との方針に転じた、と北の内部に詳しい専門家は言います。2015年の慰安婦合意を堂々と破った文在寅政権を、日本がまともな交渉相手として扱わなくなったのと同じです。

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