菅首相に粘着する文在寅 ”蚊帳の中”にもぐりこみたい韓国、「左派政権駆除」に動く日米

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バイデンは助けてくれない

――韓国は米国に助けてもらえないのですか?

鈴置:米国は普通だったら、日本に「韓国と話し合ってやれ」と言うはずです。しかし、米国も文在寅政権をまともな政権とは見なしていない。

 日韓慰安婦合意はB・オバマ(Barack Obama)政権時代に副大統領だったJ・バイデン(Joe Biden)氏が保証人を務めました(「かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 『恐中病と不実』を思い出すか」参照)。

 慰安婦合意の当時、菅義偉氏は官房長官で合意の実質的な担当者でした。現在の日米両国の首脳は、ともに文在寅政権に裏切られた経験を持つのです。

「文在寅の約束破り」でメンツを失ったバイデン大統領が、同様にメンツを失った菅義偉首相に対し「韓国の顔を立ててやれ」と言う気にはならないでしょう。

 実際、バイデン政権は日本に「日韓首脳会談を開いてくれ」と求めて来ていません。米国政府は「日米韓」の枠組みは強調しますが、それは北朝鮮の暴発を抑えるために過ぎません。

左派政権阻止でスクラムの日米

――でも、バイデン大統領は米韓首脳会談を実施しました。

鈴置:米国の目的は「文在寅をシカトする」ことではありません。2022年5月の政権交代後も韓国で反米左派政権が続くのを阻止するのが目標です。

 5月21日の米韓首脳会談後の共同声明には北朝鮮の人権問題を盛り込んだ。米国は韓国と北朝鮮の間にクサビを打ち込んだのです。これにより、文在寅政権が北朝鮮との和解に動いて韓国で左派への支持が高まる可能性を抑えることに成功しました。

面従腹背の文在寅 ソウルに戻ると即、金正恩に“詫び状” 米国でも始まった『嫌韓』」でも指摘しましたが、米国の専門家の中には「2022年3月の大統領選挙で韓国に再び反米左派政権が登場したら面倒なことになる。だから、文在寅政権に点数を稼がせてはいけない」と公然と主張する人もいるのです。

――菅政権も「左派政権の続投阻止」が目的ですか?

鈴置:その通りです。昨年末、官邸筋から「次の大統領選挙で反日政権が登場しないよう動く」との対韓基本方針が漏れてきました。実際、「まともな政権ができるまで相手にしないぞ」とのメッセージを韓国人に送り続けています。当然、米国と調整済みでしょう。

――韓国が保守政権に代われば、首脳会談に応じるのでしょうか?

鈴置:それは分かりません。韓国の裁判所が自称徴用工判決で日韓国交正常化の際に取り決めた枠組みを壊しました。次の政権が完全に修復しない限り、日韓首脳会談の開催は容易ではありません。

 日韓国交正常化の法的枠組みの根には、戦後体制を定めたサンフランシスコ条約があります。米国は自分が主導して作り上げた戦後体制にヒビを入れる韓国の動きには神経を尖らせています。「保守政権に代わったから、韓国との首脳会談を開け」と米国が日本に言うかは微妙です。

日本に喧嘩を売った外交部

――文在寅大統領は自らが置かれた状況を理解しているのでしょうか?

鈴置:韓国専門家の間で議論になる点です。大統領自身は外交の素人。下から「天才的な外交です」と言われ、その気になっているかもしれません。

 ただ、少しでも外交に詳しい韓国人なら「日米が手を組んで反米反日左派政権の駆除に乗り出したな」と見ているでしょう。

 今回のG7サミットで日韓首脳会談が不発に終わった後の「事件」に関連した韓国内の動きもそれを示唆しています。「事件」と呼ぶのは、韓国の外交部が「政府間で首脳会談を実施するとの約束があったのに、日本が破った」とメディアに説明。すると日本政府がこれを完全に否認したうえ、韓国政府に抗議したからです。

「青瓦台から会談の設営を命じられていた外交部が、失敗の責任を取らされるのを恐れ日本の約束違反と発表したな」と私は見ました。韓国メディアにもそう考えた記者がかなりいたようです。

 なぜなら朝鮮日報や中央日報など、政府と距離を置くメディアは「日本側の否認と抗議」をかなりのスペースを使って報じたからです。韓国外交部の言い分に疑問を持たない限り、こういう紙面にはならない。

 極めつけは中央日報の社説「見苦しい韓日首脳会談真実攻防」(6月16日、日本語版)でした。両国政府の主張を平等に紹介した後、以下のように外交部を批判したのです。

・たとえ日本が暫定合意を破ったのが事実でも、その内幕を韓国政府が外交慣例を破ってメディアに流す方式で公開したことは決して褒められた対応とはいえない。
・首脳会談を巡る外交チャネル間の水面下の協議を公開して責任攻防に火をつけたのは、問題を解決するのではなく大きくすることだ。

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