妻殺害の「講談社元次長」が二審有罪で“自主退職” 大学時代の仲間は「支援する会」を設立

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

「妻は自殺だった」と一貫して無罪を訴えながらも、一審に続き二審でも殺人罪で懲役11年の有罪判決を受け、上告中の朴鐘顕(パク・チョンヒョン)被告(45)の周囲で、新たな動きが起きている。2月、朴被告はこれまで全面的に支援を受けてきた講談社を退社。それからまもなくして、学生時代の友人たちが中心となって「支援する会」が起ち上がり、裁判のやり直しを求める署名活動を開始したのだ。「殺人罪」で有罪とされた友を支援する仲間たちの思いとはどのようなものなのか。会の代表に話を聞いた。

 ***

2月末に講談社を退職していた

 会の名称は「朴鐘顕くんを支援する親族、友人たちの会」(以下、支援する会)。今年1月に東京高裁で控訴棄却の判決が出てから、朴被告の出身である京都大学時代のサークルのメンバーらが中心となり活動を始め、3月に正式に発足した。5月からはホームページやTwitterを起ち上げ、判決文やその問題点を訴える資料をアップし、公正な裁判のやり直しを求める署名を呼びかけている。

 講談社の次長職だった朴被告を巡っては、雇用関係を維持してきた会社との関係が注目されてきた。講談社は朴被告が逮捕・起訴され、一審で有罪判決を受けた後も、休職扱いにして支援。広報室長が全公判を傍聴し、朴被告と面会するため拘置所に通い続けるなど、異例の対応を取ってきた。二審判決直後も「社員は上告の意向を表明しており、今後の推移を見守りつつ、社として慎重に対処してまいります」とコメントしていたが、1カ月後の2月末日、朴被告はついに退社したという。

 講談社関係者が明かす。

「社員には隠すこともなく『退社』と掲示されていました。解雇ではなく、就業規則に則り退職したという書き方。ただ、これは会社が彼を見捨てたことを意味するものではありません。会社としては無罪を訴える社員を信じるという立場を貫いてきましたが、最高裁で有罪が確定してしまえば、さすがに懲戒解雇せざるを得ない。だから、二審も有罪だった場合は、自主退職させることで話が決まっていたのです」

 つまり、退職金が支払われる代わりに、このタイミングで縁を切らざるを得なかったというのだ。

「このような温情ある対応は、ヒットメーカーとして会社に貢献してきた彼の実績も考慮されたと思います。朴被告は、健常者と聴覚障害者との恋愛を描いて映画化もされた『聲の形』や、累計3700万部を超えるファンタジー大作『七つの大罪』などを立ち上げた名物編集者として、会社に莫大な利益をもたらしてきました」(同前)

 社内では朴被告が所属していた漫画部署などを中心に、今も無実を信じる社員が少なくないという。だが、社員でなくなった以上、これからは会社として支援することはできない。その代わりに、今度は学生時代の仲間たちが立ち上がったという話なのだ。「支援する会」の話に入る前に、事件と裁判の経過をおさらいしておく。

次ページ:密室内で起きた事件

前へ 1 2 3 4 次へ

[1/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。