テルアビブ空港乱射事件から49年 元日本赤軍「岡本公三」容疑者の今

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ゴーン被告の密入国

 そうしたインタビュー記事に、岡本容疑者が「日本に帰りたい」と望郷の念を口にしたという記述が散見される。だが、足立監督によると、「半分は本当でも、半分は事実ではない」という。

「公三さんが帰国を願っているという報道は、確かに嘘ではありません。ただし、取材となると、記者の方が『日本に帰りたいですか?』と質問し、公三さんが『はい』と答えるということになります」

 足立監督が岡本容疑者と電話で話していると、望郷の念を語ることもあれば、「レバノンで死にたい。日本に帰っても収監されるだけだ」と口にすることもあるという。

「70代になっても帰国を巡って逡巡しているわけです。人間は二者択一の選択肢があった際、片方に即断するのは稀だと思います。どちらか決められずに迷うほうが、人間としてよほどリアルな姿ではないでしょうか」

 足立監督は最後に意外なエピソードも明かしてくれた。日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(67)が2019年、母国のレバノンに密入国した際、岡本容疑者にも影響が及ぶのではないかと現地支援者の間で緊張が走ったという。

「日本に帰ろうと思うな」

「もしゴーン被告の身柄が日本政府に引き渡されたら、その時に公三さんも一緒に日本へ送還されるのではないかとレバノンの支援者が憂慮したんですね。私のところにも『日本の動きを調べてほしい』と要望があったのですが、『今は静観しよう』と落ち着かせました。結局、もし公三さんの身柄を日本に引き渡そうとすれば、むしろ国内で激しい反対運動が起きてもおかしくないとレバノン政府は心配していたそうです」

 岡本容疑者はアラブ社会なら英雄でも、日本人にとっては卑劣なテロ行為に加担し、異国の地で老いさらばえていく殺人犯である。

「そうした毀誉褒貶を背負うことが、何よりも公三さんの人生で必要なことではないでしょうか。だから私は公三さんと話す時、何度も『日本に帰ろうなんて思うな』と忠告してきました。彼は英雄と殺人者という2つの相反する評価を背負いながら、パレスチナの革命戦士が眠る墓地に埋葬されるべきです。それでこそ公三さんは公三さんの人生を全うしたと言えるのではないでしょうか」

デイリー新潮取材班

2021年5月30日掲載

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