テルアビブ空港乱射事件から49年 元日本赤軍「岡本公三」容疑者の今

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唯一の生き残り

《税関で自分たちの荷物からソ連製AK47自動小銃と手投げ弾を取出し、250人から300人の到着客や、空港係員に向かって小銃を乱射、次々と手投げ弾を投げつけた》

《自動小銃の乱射を浴びて約100人がばたばたと倒れ、あたりに血や、肉塊が飛び散り、逃げ惑う人たちで、空港は大混乱になった》

 犯行に及んだのは、奥平剛士 (当時27歳)、安田安之(当時25歳)、そして当時25歳だった岡本容疑者の3人だった。奥平と安田は京都大学工学部、岡本容疑者は鹿児島大学農学部に入学した。高等教育を受けていた日本人の男3人が残虐非道なテロ行為を実行したわけだ。

 奥平と安田は現場で死亡した。死因は主に射殺説と自爆説がある。イスラエル側の反撃が無差別で現場が混乱したとの指摘があるほか、安田の遺体は損傷が極めて激しかったことなどがあり、今に至るまで結論は出ていない。

 いずれにしても岡本容疑者だけが生き残り、イスラエルの警察に逮捕された。精巧な偽装パスポートを使っていたことなどから、生き残った男の素性はなかなか明らかにならなかった。朝日新聞が岡本容疑者の名前を報じたのは6月2日の朝刊。1面トップに「生き残り犯は鹿児島大生」との記事が掲載された。

「できのいい兄弟」

 1面には《岡本の横顔》として、「兄の影響受ける 小柄で温厚な感じ 父は元小学校長」との記事がある。少し長くなるが引用させていただこう。

《長兄は京大を卒業し、東大文化人類学教室にいた当時、佐藤訪米阻止羽田闘争に加わった。「よど」ハイジャック事件を起こし、いま平壌にいる次兄の武(26)は熊本県一の進学校といわれる県立熊本高から京大》

 本題から逸れてしまうが、岡本容疑者の兄である岡本武は生きていれば今年76歳になる。記事にある通り、70年によど号ハイジャック事件を起こして北朝鮮に亡命した。

 だが80年代になると訪朝支援者にも姿を見せなくなった。88年に土砂崩れが原因で死亡したと90年代になって関係者が明かした。だが、脱北を図って失敗し、強制収容所に送られたとも言われる。朝日新聞の記事に戻ろう。

《公三は熊本市内の小中学校を経て、同市内のカトリック系私立熊本マリスト学園を卒業、2人の兄のあとを追って京大を狙った。しかし、失敗して二浪。予備校生活を京都市で送った。このとき実母をなくした。熊本の教員仲間では「できのいい兄弟」と評判だったが、長兄─次兄─公三と、京大に強く根を張る共産同(ブント)の思想的影響を受けた、とみられる》

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