「若い頃から左翼が嫌いでした」 百田尚樹氏インタビュー①

社会2016年6月10日掲載

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■マスコミが黙殺

 百田尚樹氏が、日本の政治状況やマスコミを痛烈に風刺した『カエルの楽園』は発売から3ヶ月で20万部を突破するベストセラーとなり、現在もランキングの上位に位置している。その割には「著者インタビューの申し込みが来ない」と百田氏が嘆いているとのことなので、作品や最近のニュースについて話を聞いてみた。

百田尚樹氏

――百田さんは、『カエルの楽園』を「私の最高傑作」と言う一方で、最近では「一種の奇書かも」とも言っているそうですが、その真意は?

 マスコミに完全に黙殺されていて、それでも売れているのが珍しいなあ、と思っているんです。

『カエルの楽園』は20万部を突破したから、ベストセラーと言っても構わないと思うのですが、主要5紙(朝日・読売・毎日・日経・産経)には1回も紹介されていませんし、書評のページがある週刊誌にもまったく取り上げられていません。

 安全保障や憲法に関する風刺を含んだ寓話ですから、私と立場が全く異なる朝日や毎日、または東京新聞などが無視をするのはわかるのですが、読売、産経にも紙面では扱われていません。これはマスコミ批判と読める部分があるからだろうか、などと思っています。

 今のところ、新聞記者が紹介してくれたのは佐賀新聞がコラムで扱ってくれただけです。そのコラムを書いた方は、その原稿を最後に退職なさったと聞きました。

 現在進行形のテーマを扱った小説ですし、しかも「寓話」がベストセラーになっているというのは珍しいことだと思うのですが、まったく報道してもらえません。

 おそらく、私と正反対の立場の方が、「安保法案反対」とか「沖縄独立」といったテーマの寓話を書いて、それがベストセラーになったら、相当なニュースとして扱われるんじゃないでしょうか。

――この作品や、百田さんへの批判の中で「百田は右翼だ」もしくは「極右だ」といった表現を目にすることがあります。実際のところ、百田さんは「右翼」なんでしょうか?

 右翼が悪いものだとは思いませんが、私自身は、自分のことを右翼だと思ったことはありません。ど真ん中の中道のスタンスだと思っています。

 ただ、愛国者ではあると思っています。

 日本では、不思議なことに「愛国者」というと「右翼だ」とされることが多いんですね。そして、その場合の「右翼」はネガティブな言葉として使われています。

 そして「リベラル」というのは、実は「反日」であることが多い。

 これは世界的に見てもかなり変わった傾向ではないでしょうか。

 そもそも、「右翼」をネガティブな言葉としている人たちの定義がわかりません。「愛国」と言えば「右翼だ」、「原発再稼働賛成」と言っても「右翼だ」、「9条改正」と言えばもちろん「右翼だ」。中国と韓国を批判しても「右翼だ」となります。

 要するに、左翼陣営に対して反論する人はすべて「右翼」だとしている。

 そういう人たちにとって、私のように、日本は自衛のために軍隊を持つべきだ、といった主張をする者は、当然のように「右翼」となるのでしょう。しかし、それが右翼ならば、世界は「極右政権」であふれていることになりませんか。

 世界中で軍隊を持たない国はごくわずかです。永世中立国であるスイスに至っては、徴兵制をとっています。数年前、徴兵制の存否を巡って国民投票が行われましたが、結局国民の意思によって「否決」、つまり「徴兵制存続」となったのです。

 じゃあそれでスイスを「危険な国家だ」と言うかといえば、誰も言わないでしょう。

 結局、自分たちの気に入らない人への悪口として「右翼」を使っている人が日本には多いということです。

 それは自分たちの気に入らない法案について「戦争法案」といった勝手なネーミングをするのとよく似ていますよね。繰り返しますが、国防軍を持つ国は極右国家とするならば、左翼が大好きな中国、韓国、北朝鮮もすべて「極右国家」です。

■昔から共産主義が嫌いだった

――そういう物の考え方、スタンスはいつ頃からなのでしょうか? 若い頃は少し左がかった思想にかぶれたけれども、その後、転向する、といった人が多いようですが……。

 私は学生の頃から、左翼思想にかぶれた同級生に反発を感じていましたし、よく論破していました。私は、20歳の頃、ソルジェニーツィンの『収容所群島』を読んで感銘を受けると共に、共産主義国家の恐ろしさを感じていたのです。

 共産主義を理想のように語る同級生に対して、

「実際はロクなことになっていないじゃないか」

 と言うと、

「いや、それは違う。共産主義の理想は正しい。間違っていないんだ」

 なんて言い返してきた覚えがあります。

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 しかし、その頃すでにソ連でも中国でも決して成功しているとは言えない状態でした。北朝鮮でもカンボジアでも、ルーマニアでもそうです。だから、共産主義がダメだということは帰納法的に考えれば明らかだと思っていました。

「お前らの言っていることは、こういうことや。崖に立っていて、『ここから飛べば、理想郷に行ける』と言っている。でも、崖の下を見れば、落下して死んだ人だらけ。それでも『落ちた奴は飛び方が悪かっただけだ。ちゃんと飛べば理想郷に辿り着ける』と言い張っているようなもんやないか」

 こんな風に言ったら、誰も言い返せませんでしたね。

 文化大革命の顛末、ポルポト政権の所業、どれを見てもよくわかるのは、共産主義国家では、必ずといっていいほど、国内で大虐殺が起きるということです。

 ちなみに、世界最小の共産主義国家による大量殺戮は、榛名山で日本赤軍がやった仲間の粛清じゃないか、と私は思っています。

 まだまだ百田氏の「大放言」ならぬ直言は続くのだが、以降は次回に。

デイリー新潮編集部