不倫相手と一泊した翌日、長女が生まれ… 25年間関係を続けてきアラ還男の“悩み”

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人生の決着をどう着けるか

 俊也さんの父親の時代は、55歳で定年退職を迎えていた。その年代になった今、俊也さんは望めばあと10年、仕事を続けてはいけるのだが、果たしてそれでいいのだろうかと考えるようになっている。

「今のところは体も健康ですけど、この先はわかりません。元気なうちに泰子と一緒に生活してみたい。そんな願望もあります。ただ、ふたりとも今さら配偶者や子どもたちに、目に見えるような形での裏切りはしたくないとも思っている。一方で、とにかく人目を避けての逢瀬ばかりだったから、一度でいいから旅行くらいしてみたい。身動きとれない感じがしていますね。思い切って何かことを起こしてみるか、25年が30年、35年と続いていくように大事に関係を紡いでいくのか。そのあたりを一度、泰子ときちんと話してみたいとは思っています」

 泰子さんとつきあうという、いちばん大きな欲求はかなえてきたが、そのためにさまざまなことを我慢してきたと俊也さんは言う。彼女とレストランなどに行ったのは年に1度あるかないかだし、お互いのスケジュールが合わずに数ヶ月会えない時期もあった。会えない時間に連絡をとれるようになったのはスマホを持つようになったここ数年のこと。

「それでも今になるとすべてがいい思い出です。ただ、僕らにはまだ時間がある。僕自身が最後、人生の決着をどうつけるのか。これからはそれを考えていきたい。そのとき一緒に過ごしたいのが泰子だから、いろいろ問題はあると思うんですが……」

 家族とも、そして泰子さんとも、丁寧に向き合ってきたのだろう。彼には選択肢はなかった。大事なものを大事にしながらがんばってきた。そんな自負さえ感じる。

「他人から見れば、どこにでもある“不倫”でしょうし、家族からみればただの“裏切り”なんですよ。それもわかっているつもりです」

 覚悟を決めて不倫関係を築いてきたわけではない。ずっと綱渡りのようにヒヤヒヤ生きてきただけですと、彼は最後にふっと笑みを見せた。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年5月26日掲載

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