「ドン・ファン元妻」起訴 無期懲役も十分あり得るワケと裁判闘争の行方

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殺害の直接証拠を得られていない中で

 和歌山地検は5月19日、「紀州のドン・ファン」と呼ばれた会社経営者・野崎幸助さん(当時77歳)が急性覚醒剤中毒で殺害された事件で、元妻の須藤早貴容疑者(25)を殺人罪と覚醒剤取締法違反(使用)で起訴した。長期化が予想される裁判では厳しい判決が予想され、無期懲役も十分あり得るという。

 社会部デスクによると、

「須藤被告は逮捕時に容疑を否認して以降、黙秘を続けているようです。地検は“殺害を立証できる証拠が集まった”としていますが、須藤被告が野崎さんに覚醒剤を飲ませたという目撃証言もなければ映像などの直接的な証拠もなく、覚醒剤を口から摂取させたのか否かなど、具体的な方法なども特定できていないのは事実です」

 殺害の直接証拠を得られていない県警と地検が描くストーリーは以下の通りだ。

・事件の約3カ月前となる18年2月に結婚した際の条件は、野崎さんが須藤被告に月100万円を渡すこと。しかし須藤被告は結婚後も和歌山・田辺市内の野崎さんの自宅には常駐せず、主として都内で生活していた。

・野崎さんは須藤被告に関する不満を周囲に漏らすようになり、被告と激しく口論する姿も目撃された。結婚式は須藤被告が嫌がったことでキャンセルされ、3月末ごろには、離婚話が持ち上がった。

どうやって覚醒剤を飲ませたかの立証

 ストーリーを続けると、

・須藤被告のスマホを解析し、覚醒剤の密売人と同じ時間・場所にいたことを示す位置情報も突き止めた。事件前、野崎さんから離婚話を切り出されていたことも含め、2人の関係悪化や13億円にのぼる遺産が殺害の背景にあるとみている。

・野崎さんには愛犬の葬儀を営む予定があり、自殺の動機はなく、覚醒剤を常用していた痕跡もない。

・当時、覚醒剤を混入できたのは須藤被告か、お手伝いさんのどちらか。お手伝いさんには事情聴取などを通じ、絶対に犯人ではないことがわかった。したがって、須藤被告以外に覚醒剤を混入する機会がある人物はいない。

 先の社会部デスクは、

「地検はこれまで県警の捜査結果に納得していなかったのですが、密売人と接触していた可能性が極めて高いことがスマホの解析結果から割り出されたことで、逮捕にゴーサインを出しました。とはいえ、起訴容疑を立証できるかというと十分ではないと指摘する声もあります」

 と話す。その“慎重な見方”について紹介してもらうと、

「密売人が証言台に立ち、須藤被告が密売人から覚醒剤を入手したことは立証できる可能性は高いかもしれません。しかし、それを野崎さんに飲ませた具体的な方法を解明できないなら、どうやって殺害と結びつけるのか難しい案件にも見えますね」

 県警は野崎さんの遺体に加えて、台所の床と掃除機から微量の覚醒剤を検出しているが、それらが同一であることを証明することは難しい。

 さらに、「本当に須藤被告以外に覚醒剤を飲ませることはできなかったのか」という点についても、

「本当に完全な密室だったのか。第三者が入室して犯行に及ぶ可能性について突っ込まれた際にそれを完全に潰せる材料があるのかという専門家の見方もないわけではありません」

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