「ドン・ファン元妻」起訴 無期懲役も十分あり得るワケと裁判闘争の行方

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詐欺事件に和歌山県警の執念

 その一方で、あるヤメ検弁護士(検察官から弁護士に転じた)は、この記事に注目したという。

〈和歌山県警は19日、札幌市の知人男性から現金約1170万円を詐取したとして、資産家殺害事件で起訴された元妻、須藤早貴被告(25)を詐欺容疑で再逮捕した。関係者への取材で分かった。再逮捕容疑は平成28年1月18日、札幌市内で、トラブル解消の慰謝料名目などで当時61歳だった知人男性に約1170万円を自身の口座へ振り込ませ、詐取したとしている〉(産経新聞2021.5.19)

 図らずも起訴と同日の詐欺容疑での再逮捕である。当のヤメ検弁護士に見解を聞くと、

「野崎さんとは違う男性に関して、詐欺での再逮捕というのは和歌山県警の執念を感じさせました。今回は裁判員裁判の対象となりますが、その場合、覚醒剤、殺人、そして別件とはいえ詐欺という事件に関与した人物の量刑は重く厳しいものとなっています」

 もちろん、裁判所の心証は悪くなりがちだ。

「検察側は、野崎さんとは慰謝料目当ての結婚で離婚を切り出されて得られるはずの慰謝料が手に入らないことを恐れて犯行を思い立ったというストーリーを描いているわけですが、この詐欺事案は“お金がない状態で詐欺を働く女性”だという印象付けとして効果的です。単独では起訴が難しそうな案件であっても、殺人とセットにされると裁判員裁判で被告人は詐欺を否認しがたい部分があります。腕の良い弁護士がつかないと無期懲役は十分にあり得ると思います」

荒唐無稽なストーリーも用意か

 須藤被告には差し当たって、和歌山県内の国選弁護人がついているという。

「それが良くないとは言いませんが、どこまで積極的にやってくれるか。3年間、県警の任意の事情聴取に否定を続け、逮捕後の取り調べでも否認や黙秘を続けているというのは心証が悪すぎて彼女をかばう人はいない。報道を見ていると、“下着を洗濯するという感覚もなく、後でゴミとして捨てていた”といった証言や長くて綺麗なネイルでスマホをいじっている映像が頻繁に流れていましたが、勾留生活に耐えられるとは思えず、証拠が開示された後、弁護士の何らかの説得に応じる可能性はあるかもしれません」

 それはともかく、須藤被告は公判で様々なシナリオを展開することも想定されている。

「例えば、“夫婦の危機だと夫は言っていたかもしれないが、夫婦のことは2人にしかわからない。夫婦の危機を回避するために覚醒剤を介しての性行為を提案して快諾を得た。摂取方法はカプセルで全て同意の元で行われたが、予想外の反応で死に至った”などといった論理を展開するかもしれませんが、そういったことは検察も織り込み済みで、裁判員裁判の構成員となる一般市民にも“荒唐無稽”と一蹴される可能性が高いでしょう」

 カネ目的の結婚が夢破れそうになったから殺害に至ったというストーリーはとてもわかりやすいだけに、裁判員裁判となる地裁判決は無期懲役になる可能性は十分ある。焦点は高裁での判断と言えるかもしれない。

デイリー新潮取材班

2021年5月25日掲載

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