江東区放火事件 東工大卒「便利屋」が抱えていた“町内会トラブル”と“怪文書”

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「うちの部にも若者を回してくれないか」

 だが、長内容疑者が逮捕された後、ふとあることを思い出したというのだ。

「割と最近の話で、1カ月以内のことだと思います。道端で、ばったり長内容疑者と会った時、邪険に扱ってしまったことが一度あります」

 その時、長内容疑者は男性にある相談をしてきたという。

「町内会は年々高齢化が進み、若者のリクルート活動に頭を抱えているんですが、最近、私はある若い住人を引き入れることに成功しました。突然、長内さんは彼を『防火部に回してくれないか』と頼んできたのです」

 男性はむっとしたという。

「私だって、その若い人を数年がかりでようやく口説き落としたんですよ。それを簡単によこせなんて虫がいい話じゃないですか。でもそんなことよりも、その時、私は連れ合いの女性と一緒にいたので、急いでいたんです。だから、『こんな道端でそんな話されても困る』って一方的に話を打ち切ってしまった」

 それからしばらくして、男性の自宅前に張り紙がされたというのだ。ちなみに、内容はビラ同様の罵詈雑言だ。

〈○○に、次ぐ早く俺の女房を早くかえせ。このスケベ野郎俺の海外出張中に女房に、手を出した世の中を馬鹿にスケベ野郎○○に再度警告する……〉

 男性が続ける。

「彼とのトラブルで思い当たることは、あの時のことくらいなのです。ただ、私はトラブルだなんて認識はありませんでしたよ。けど、もし彼が逆恨みしていたとしたら、私が女性といるところを見て腹が立ったのかもしれません。あとで人づてに聞いたんですが、彼は便利屋になる前、大手ゼネコンで海外勤務中に奥さんに子供と一緒に逃げられてしまったそうなんです。もちろん、私が交際している女性は、彼の元妻でもなんでもない無関係な人ですよ」

 確かに、怪文書では「女房を寝取られた」という文言が繰り返されていた。妻に逃げられた過去を持つ長内容疑者の嫉妬が怪文書を書かせたのか。もっとも、怪文書については警察が捜査中で、長内容疑者が関与したかはわからない。

 男性は、長内容疑者が町内会活動に積極的に参加していたのも、独り者の寂しさゆえだったのではないかと振り返る。

「カラオケ大会や旅行など、よく参加していました。ただ、酒癖が悪く、防火部の仲間に対して飲みの席で因縁をつけたり、トラブルが多かったと後で聞きました」

 もしこんな逆恨みが放火の動機ならば、恐ろしい話である。

デイリー新潮取材班

2021年3月22日掲載

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