消えた“美人過ぎる〇〇”という表現 差別、セクハラへの配慮が原因も、トレンドブログでは未だに現役(中川淳一郎)

国内 政治 週刊新潮 2021年3月18日号掲載

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 東北新社から7万円超の接待を受けていた山田真貴子内閣広報官(60)が辞任しました。ネットで「山田真貴子」と検索すると予測変換で「若い頃」という言葉が出ます。これは一体どういう現象かといえば、「おっ、山田さん、美人だなぁ。若い頃はさぞや美しかったんだろうなぁ! 若い頃の顔写真を見たいなぁ」と、多くの人の心を揺さぶっているということを意味します。

「トレンドブログ」と呼ばれる、「かもしれませんね」などの憶測とコピペに溢れた、多くが著作権・肖像権違反のクソサイトで、「山田真貴子がかわいい!若い頃の顔画像は?経歴と夫や子供・家族は?」といった記事(笑)にされ、それをクリックする下心が広告費に化けるのです。

 多くの男性は、「限定的なある状況下においては美人だなぁ」という人を「美人過ぎる◯◯」などとして消費してきました。だからこそ、「不倫出張疑惑」の大坪寛子厚労省大臣官房審議官や、相撲中継の際、両国国技館の前方に映る「升席の妖精」などが「美人だ!」と評判になり、クソサイトのコンテンツに採用されるのです。

 かつてネット記事では散々「美人過ぎる◯◯」が登場してきました。「美人過ぎる八戸市議」「可愛過ぎる海女」「美人過ぎる野球場ビール売り子」「美人過ぎる甘栗販売員」などがありました。また、「広末涼子似」と評判になった元芸人のおかもとまりさんは、「可愛過ぎるものまね芸人」と呼ばれたものです。要するに、「女性芸人は不細工である」といったイメージがあったのです。

 これらの登場はほんの8年ぐらい前までで、大手メディアのネット記事でも頻繁に登場した記述ですが、最近はさすがに減少しています。それは、女性をルックスで評価するのはセクハラであり差別である、という意識が定着しつつあるからでしょう。そんな状況下、「トレンドブログ」は相変わらず「山田真貴子がかわいい!若い頃の顔画像は?」なんて平気で書くし、「山田真貴子さんが美人と評判です。若い頃はさぞやモテたんでしょうね。だからこそ、飲み会にも誘われるのでしょうね」みたいな、テキトー過ぎる憶測を繰り出します。

 これが多数のアクセスを集めるということは、当然男性の心の中には「ルックス至上主義」というものが未だ存在し、公言しなくなったものの、心の中は8年前と変わらないということになります。

 なお、「イケメン過ぎる◯◯」で有名な二大巨頭は中国の「イケメン過ぎるホームレス」程国栄氏(サッカー元日本代表・中澤佑二氏と伊勢谷友介を足して2で割った雰囲気)と、名古屋の東山動植物園の「イケメン過ぎるゴリラ」であるシャバーニです。ここまで意外性がないと「イケメン過ぎる」の称号は得られないようです。

 山田氏については朝日新聞出版が運営するニュースサイトAERAdot.が「菅首相の長男が接待した美人内閣広報官の裏の顔 更迭された総務省幹部の後任は夫」というタイトルの記事を出しました。これには「森喜朗を『女性蔑視』と叩いた朝日が『美人』と見出しに持ってくるとは何事か!」といった批判が多数ネットに書き込まれ、「美人内閣広報官」部分が「山田内閣広報官」に代わったというオチもつきました。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

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