フランスでコロナワクチン接種希望者が他国に比べ圧倒的に少ない理由

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大統領も慎重

 新型コロナのワクチンが通常より短期間で開発されたということもあり、長期的な影響が不透明なままワクチン接種を強制すると、国民の反発を招く恐れもあります。

 そのため、マクロン大統領は「ワクチンは義務化しない」と表明しています。まずは、ワクチン効果の透明性を重視し、情報公開を徹底することで国民の理解を得る、ということのようです。

 実際、フランスの国家安全保障局(ANSM)は、新型コロナのワクチン接種後の追跡調査を行い、結果を定期的に公表しています。

 1月29日の時点で、フランスでは144万件以上のコロナワクチン接種が行われており、接種後に死亡したのは57名です。ワクチン接種後、2時間で死亡したケースもありますが、ワクチンとの関連性は不明とされています。顔面麻痺、呼吸困難などの副反応は1,356件確認されています。

ワクチンの黒歴史

 ですが、こうした状況は世界各国共通のはずです。これだけでは、なぜ「フランスは最もワクチン接種を望んでいない国」なのか、説明がつきません。フランスには、「そもそもワクチンにウイルス感染予防効果があるのか?」という声が根強くあります。これは、歴史的にみてワクチン反対派の多い国であることが大きく関係しています。

 フランスでは、1902年に天然痘のワクチン接種が初めて義務化されましたが、それ以前から反対論がありました。1950年にBCGワクチン接種が義務化、1952年にはジフテリア、破傷風のワクチンも義務化されたことにより反対派が憤慨し、1954年には「予防接種の自由のためのナショナルリーグ(国民同盟)」が設立されました。

 更に1964年にポリオワクチンが義務化されたことをきっかけに、ナショナルリーグなどの反対派は勢力を拡大させました。1969年にパリで開催された「ワクチン賛成派VSワクチン反対派」の公開討論会では、聴衆1000人のほとんどはワクチン反対派でした。この討論会では、ワクチン接種が「犯罪」で、義務化は「人道に反する罪」などという主張もあった程で、今よりワクチンへの抵抗感が強かったことが窺えます。

 これまでのワクチン接種による事故は、ワクチン反対派の主張の根拠として現在も至るところで語られています。

 例えば、フランスの製薬会社サノフィが2015年に開発したデング熱ワクチンの事故は、国内のみならず世界的にも影響を与え、多くのフランス人の記憶に残っています。

 ワクチン接種前にデング熱にかかったことがない子どもにとって、重度の感染症に苦しむリスクが高くなることがわかったため、フランスではワクチン接種開始2年後にキャンペーンが停止しています。

 B型肝炎ウイルスワクチンについては、現在も議論が続いています。1994年、約2000万人にB型肝炎ウイルスワクチンを接種した後、1,000件以上の多発性硬化症が発生し、政府は学校でのワクチン接種キャンペーンを停止しました。被害者には政府が補償していますが、ワクチン接種のメリットの方がリスクを上回るとして、2018年から、すべての子どもに予防接種が義務付けられています。これは、ワクチンを受けさせない親が多いためにワクチン接種が進まず、政府が義務化に踏み切ったという話を耳にします。

 ワクチンに含まれる添加物を問題視する声もあります。

 ヨーロッパでは2010年、ワクチンの効果を増強するために添加される補助剤(免疫増強剤)「アジュバント」を含んだH1N1インフルエンザのワクチンを摂取した約20名に、筋力低下や睡眠障害が認められました。これは、英国の製薬会社大手グラクソ・スミスクラインが製造した、新型インフルエンザ用のアジュバント添加ワクチン「パンデムリックス」との強い関連性が複数の研究により確認されていて、2017年の時点で、フランスの約100例を含め、総症例数は650例と推定されています。

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