帰国もできない散歩にも行けない…フランス在住の日本人はコロナで窮地の日々

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それでも日本に帰れない

「自分で海外移住を選択したのだから自業自得。文句があるなら日本に帰ればいい」と言われるかもしれません。しかし、現実には、多くの在仏日本人はこちらに家族や仕事があるため、簡単に帰国はできません。

 フランスに長く住んだ日本人がこのコロナ禍で新たに職を探したり、住居や学校など、生活基盤を一から築くのは容易ではありません。

 一時帰国すらも、帰国日から15日間は公共交通機関が使えず(←成田や羽田から使うなという話でしたっけ? ←空港から隔離場所への移動を含め、15日間は人と接触するな、というお達しです)、自主隔離が必要なので、休暇を利用した帰国も現実的ではありません。

 周囲の日本人からの、「海外からコロナを持ち込む原因になる」という雰囲気が気になって帰りづらい、ということもあります。

「日本にいる家族が、周囲から私が日本に帰ってくると迷惑だ、と遠回しに言われた」というツイートも見られます。家族にまで迷惑がかかることもストレスになり、やはり帰るべきではない、と、帰国を躊躇してしまいます。

 日本人は海外に住んでも、お風呂に入ったり、日本食を食べたりしてストレス発散をしています。それも、フランスはシャワーだけで浴槽がない家も多く、お風呂でゆっくり温まることもできなかったり、外出制限により日本の食材すら買いに行けない状況が続いています。

 こういったストレスが溜まっているせいか、SNSで見かける日本人の声も、

「外に出る気力がない。家で1日中TVを見るかゲームをしている」

「仕事に対しやる気が出ない。夜寝つけなくなった」

「とにかく日本に帰りたい」

「コロナで家族と喧嘩が増えた」

 など、ネガティブなものが増えています。

 パリ在住の作家、辻仁成さんもツイッターで「寝つけない、コロナ鬱っぽい」と心情を吐露していました。

 多くの日本人は今はとにかく耐え忍ぶ時と考えていますが、誰もが先の見えないロックダウンに不安を抱き、フランスにとどまるのもストレス、日本に帰るのも不安、という状況の人もいます。

 海外在住の日本人が帰国する際には、感染対策がきちんと取られ、帰国する日本人も、迎え入れる日本人も、双方が安心できる状態であってほしいと思います。

 フランスに居続けるには、この国の状況に一喜一憂せず、感染対策を守りつつ、自分なりの息抜きを見つけることも必要なのだと思います。

ヴェイサードゆうこ
翻訳家・ジャーナリスト。青山学院大学国際政治経済学部卒。ITベンチャーから転身し、女性向けweb媒体のライター、飲食専門誌の編集記者として執筆。2016年よりフランスに移住し、現在はYouTubeで現地情報を発信中(http://bit.ly/2uQlngQ)。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月9日掲載

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