妻の友人と不倫、いきなり離婚届を突きつけられて…今考えると全ては策略だったのか?

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自宅はもぬけの殻

 自宅に行ってみよう。ある日曜日、マサトさんは意を決して自宅へと向かった。元妻から罵詈雑言を浴びてもいい。復縁しなくてもいい。ただ、心から謝りたい。そう思った。

 ところが自宅は人が住んでいる気配もなかった。

「いったい、どうしたのだろうと家の中をのぞき込んでいると、近所の人に会ったんです。彼女は『あら』と大きな声を出して寄ってきました。『お引っ越しされたんでしょう、どうしてここへ?』って。おそらく妻は一家で引っ越すと言ったんですね。もうどう思われてもいいと考えて、実は離婚したこと、妻子はここに残っているはずだということなどを話しました。すると『なんだかおかしいと思ってたのよ。だって奥さん、よく外で男性と歩いていたから。近所の噂になってたのよ。奥さんの浮気で離婚?』と興味津々で聞いてきたので、あわてて引き揚げました。でもすごく嫌な予感がしたんですよ」

 そもそも、なぜ妻が親友の相談にのってほしいとマサトさんに頼んできたのか。男性の気持ちが知りたいとトモカが言っていると妻は述べていたが、夫とトモカさんをわざわざふたりきりで会うように仕向けたのは妻だ。何かがおかしい。

 マサトさんは長男に連絡をとろうとしたが、携帯番号も変えてしまったのか連絡がとれない。長女も同様だった。妻にはどうしても電話をかける気になれなかった。

 真実を知りたいのか知りたくないのか、自分でもわからない日々が続いた。そしてつい最近、長男がマサトさんの勤務先にやってきた。

「留年してしまったので、あと1年分の学費を出してもらえないかということでした。それはいいけど、どうしているんだと聞いたら、長男はひとりで暮らしていると。妻と長女が一緒に小さめのマンションを買って住んでいるそうです。君たちを傷つけて申し訳ないと深く頭を下げました。すると息子は、『お父さんが何をしたのかはお母さんに聞いた。だけどお母さんも似たようなものだと思うよ』と。別れ際に、気が向いたら今度、一緒に飲もうと声をかけたら、息子が少し笑ってかすかに頷いたんです。あの笑顔だけが今の僕の支えですね」

 ひょっとしたら妻のほうが離婚したかったのではないか。妻には以前から男がいたのではないか。だからマサトさんが浮気するように自分の親友を差し向けたのではないか。意図的ではなかったかもしれないし、トモカさんが加担したとも思いたくないが、自分の浮気が少しでもカモフラージュされればと深謀遠慮をはたらかせたのではないだろうか。彼はそこまで考えたという。

 実際、浮気調査の仕事をしている人と話したところ、こういった例はそう珍しくないと聞いたことがある。妻から夫へ、夫から妻へ、相手の浮気を先に暴いて慰謝料をせしめ、実は自分にもともとつきあっている人がいるのだ。その場合、ほとぼりが冷めたころ、不倫相手と再婚するという。

 マサトさんのケースがそうだったかどうかはわからない。だがマサトさん自身、そう考えれば妻の突然の離婚届も腑に落ちるのだそうだ。

「子どもたちの手前、妻はまだまだ再婚はしないでしょう。そういう深謀遠慮があったかどうかもわからない。もうどちらでもいい。ただ、僕の22年の結婚生活は何だったのか、虚しさだけが募りますね」

 気がつくと下を向いて歩いている。自分がどんどん縮んでいくような気がすると、彼は自嘲的につぶやいた。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月10日掲載

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