韓国人はなぜ、平気で約束を破るのか 法治が根付かない3つの理由

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2021年1月26日掲載

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 韓国人はなぜ、約束を守らないのか――。日本で深まる疑問に韓国観察者の鈴置高史氏が答える。

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「困惑」のフリして責任回避

――文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「慰安婦合意を認めている」と語りました。

鈴置:1月18日の新年記者会見での発言です。正確には「韓国政府はその合意が両国政府間の公式的合意だったとの事実を認定します」と語ったのです。政府間の合意を「合意」と認めたのですから当たり前の話なのですが、ニュースとして報じられました。

 前の朴槿恵(パク・クネ)政権が結んだ慰安婦合意を、文在寅政権は「元・慰安婦が認めていない」との理屈を掲げ事実上、破棄していたため「ニュース」になったのです。

――なぜ、姿勢を180度修正して見せたのでしょうか。

鈴置:米国でバイデン(Joe Biden)政権が登場したからです。2015年の日韓慰安婦合意は当時、官房長官だった菅義偉・現首相と、旧知の李丙琪(イ・ビョンギ)青瓦台(大統領府)秘書室長が水面下で交渉しまとめました。

 その際、合意の保証人を務めたのがB・オバマ(Barack Obama)政権で副大統領だったバイデン氏でした(「かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 『恐中病と不実』を思い出すか」参照)。

 日米会談を新首脳同士で開けば、菅義偉首相はバイデン大統領に「あなたに保証人になってもらった約束を韓国が堂々と破りました」と言い付けるはずです。米国の怒りをかわすために、文在寅政権は形だけは「約束は守っている」ことにしたのでしょう。

 文在寅大統領が会見で、日本政府に賠償を命じた1月8日の慰安婦判決に関し「率直に言って、少々困惑しているのも事実です」と語ったことからも、それは明らかです。

 日本政府、さらには米国を敵に回す今回の判決を、政権の同意なくして裁判所が下したと考える韓国人はほとんどいません。だからこそ、文在寅大統領は「困惑している」ととぼけて責任回避したのです。韓国人にも、バイデン大統領に対しても。

裁判官の大脱走

――政権が判決を左右できるのですか?

鈴置:今の韓国では可能です。文在寅政権はスタートするや否や最高裁判所長官を左派にすげ替えました。そのとたん、棚上げされていた自称・徴用工裁判が再開し、新日鉄住金(現・日本製鉄)に賠償を命じる判決が出ました。

 さらに今年1月、裁判官や検事を専門に捜査・起訴する高位公職者犯罪捜査処(公捜処)を発足させました「『公捜処』という秘密兵器で身を守る文在寅 法治破壊の韓国は李朝以来の党争に」参照)

 裁判官はますます政権の顔色を見て判決を下すほかなくなりました。韓国の裁判官の中にも誇り高い人はいますが、そんな人は職を降りるほかありません。

 朝鮮日報は「エリート判事、80余人が辞表提出、裁判所はショック」(1月21日、韓国語版)で裁判官を辞める人が続出していると報じました。要点を翻訳します。

・2月の定期異動を控え、1月20日までに辞表を提出した裁判官が80人を超えた。史上最大の規模という。司法研修所の首席終了者らエリート判事が多数含まれている。
・80人のうち、20人程度は裁判所長か高裁の部長判事で、全体の134人中の14%に相当する。これまた前代未聞の出来事だ。
・裁判官「大脱出」の原因は、文在寅政権下で裁判所の要職を左派が独占するようになったことと、裁判官の信任投票を経ないと裁判所長に就任できなくなったという、人事上の不満からだ。
・文在寅政権の「積弊清算」のスローガンの下、朴槿恵政権当時に中核ポストを占めた裁判官100人超が職権乱用罪で検察の取り調べを受けた。最近、彼らの多くが弁護士事務所に移った結果でもある。

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